
この記事では、西京附中 ( 西京中・西京高等学校附属中学校)で出題された過去問のうち、2019年度国語(検査I)の傾向分析をお伝えします。
この記事でわかること
・ 西京附中2019国語の概要(難易度・新傾向等)
・ 西京附中2019国語の各問別分析(合格するために落とせない問題、捨てる問題)
・ 西京附中に合格するために必要な国語の力とは
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1.概要
1.例年の傾向
適性をみる検査Ⅰは、毎年1~2題の大問から構成されています。ここ数年は、2つの文章、もしくは文章と詩1つずつという2つの題材に対して、読解問題・作文問題が出題されています。洛北附中に比べ、文章量も多く4~5ページにわたって課題文が与えられています。また、出題される課題文は、新書を中心に科学・教育・道徳観などをテーマにした評論文や詩から引用されることが多くなっています。
西京附中の国語の問題で求められている力は大きく分けて3点です。1点目は「基本的な国語知 識」、2点目は「課題文を正確に捉え、条件に合わせて解答する能力」、そして3点目が「課題文と関連させて自分の意見を客観的に述べる能力」です。
1点目の「基本的な国語知識」を問う問題では、言葉の使い方に言及した問題、接続語を選択する 問題などが出題されています。特に接続語の問題は出題頻度が高いため、よく慣れておくことが必 要です。出題形式は選択形式がほとんどを占めます。
2点目の「課題文を正確に捉え、条件に合わせて解答する能力」を問う問題では、文の構造について考える問題や、本文内容の言い換え・説明をする問題、理由を問う問題などが出題されています。また、出題形式は大きく分けて選択形式、抜き出し形式、記述形式があります。特に記述形式では、本文をそのまま書くと解答欄をはみ出したり、字数制限を超えてしまったりすることも多いので、筆者の意見をまとめて自分の言葉で表現する工夫が必要です。
3点目の「課題文と関連させて自分の意見を客観的に述べる能力」を問う問題では、「2段落構成で150~200字で書く」という形式がここ5年間で共通しています。また、年度によっては「2つの課題文の共通点を書くこと」、「課題を達成するためにどのようなことが出来るか」などの指示もあり、問題で問われている内容を慎重に把握する必要があります。
2.今年の傾向
今年度の適性をみる検査Iは、大問数が1題、小問数が11問であり、昨年と比べると大問数かが1題減り、全体の問題数は増加しました。文章レベルについては、語注の数が昨年度よりもやや増加していますが、身近なテーマを扱っていることと、議論の流れ自体は具体例も豊富で理解しやすかったことから昨年度よりも読みやすい文章だったのではないでしょうか。
文章Iの永山久夫『なぜ和食は世界一なのか』は、具体例を用いながら和食に備わる魅力を説いた上で、今後の食生活における和食の重要性を主張した文章でした。文章IIの山極壽一『ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」』は、人間と動物の食のあり方を対比した上で、人間の食の特徴を明確にし、食事におけるコミュニケーションの重要性を訴えた文章でした。
今年度の問題では、「2.課題文を正確に捉え、条件に合わせて解答する能力」が特に要求されました。特に大問1の問2では和食の魅力を15字以内で答える出題、また問5では「効率化」を20字以内で言い換える出題、問8では指定字数内で設問の空欄にあてはまる内容を答える出題がなされました。この問題形式では、本文内容を自分なりにかみ砕き、指定された字数におさめる必要があるため、まさに「本文内容を正確に捉え、条件に合わせて解答する能力」が問われているといえるでしょう。少ない字数におさめるためには本文内容を理解し、それを表現する語彙を備えておく必要があり、近年この力が特に求められています。
昨年度は文章ごとに大問が分けられていましたが、今年度も2つの文章をまたいだ出題が複数あり、その点では大きな変化はありませんでした。一方、ここ5,6年で比べると①記述問題の字数制限と②作文の出題、の2点で大きく変更しています。①について、過去の出題形式では字数制限なしまたは長めの字数制限による記述問題が見られましたが、近年では短い字数制限のもとで記述問題を出題しています。また②について、以前までは1段落目に「2つの文章のメッセージの共通点」を、2段落目に「メッセージの共通点を踏まえたあなたの意見」を書くよう指示していましたが、今年度は昨年度同様に要約問題の出題はなく、1段落目に「本文から学ぶことが出来ること」を、2段落目に「和食文化を受け継ぐために出来ること」を書く作文が出題されました。
3.難易度について
例年、試験時間に対して課題文の分量が多いことと、解答の根拠となる部分が傍線部と離れていたり本文中に散らばっていたりする記述問題が少なくないことから、西京附中の検査Ⅰの難易度は比較的高いと言えます。そのためか、近年は合格者平均点が50点を下回る年度もありました。
今年度の難易度は、記述問題が短文記述となっており解答に必要なポイントを全て正確にそろえることに難しさがある一方で、抜き出し問題は比較的解きやすかったこと、また作文で要約を書く必要がなくなったことと、意見文のテーマが身近であったことから全体的に昨年並みと考えられます。
2.各問題の分析
大問一
文章I 永山久夫『なぜ和食は世界一なのか』
文章II 山極壽一『ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」』
(1) 文章Ⅰ中の内容を文章Ⅱ中から探す抜き出し問題【標準】
文章Ⅰ中に記載のある「旬にこだわる食文化」という内容と深く関わる人間の特性を文章Ⅱ中から探し出す抜き出し問題でした。例年、傍線部と離れたところから答えを探す問題が出題されています。探す場所が同じ文章内か違う文章かの違いはありますが、解答する上で求められる力は例年と同じです。一方で、傍線部と離れたところに答えがある問題は一般的に難易度が高いため、ヒントとなるキーワードは易しくなっています。この点から差がついた問題と言えます。
(2) 傍線部に関連する内容を説明する記述問題【標準】
「魅力あふれる和食」という内容において、魅力を感じる部分を「こと。」と結ぶ形で、15字で答える問題でした。近年、少ない字数の中で解答を求める問題が出題されており、今年も厳しい字数制限からどの部分を解答にするかを吟味することが求められました。一方で、解答する上で必要になるポイントの目星はつけやすかったこともあり、受検生の中で差が出た問題と言えます。
(3) 空欄に当てはまる接続語の組み合わせを選ぶ問題【やや易】
空欄3つに入る接続語の組み合わせを、4つの選択肢から選ぶ問題でした。接続語の問題はほぼ毎年出題されています。形式は昨年と同様でした。正解でない選択肢の中には、確実に当てはまらないと判断できる接続語が含まれており消去法で選択肢を絞っていくことで正解できた問題です。ぜひ正解したい問題と言えます。
(4) 同音異義語の中で傍線部と同じ漢字を使う選択肢を選ぶ問題【やや易】
文章中で使われている「複雑」の「フク」と同じ漢字を使う熟語を答える問題でした。漢字に関する基礎知識を確認する問題は一般的な中学入試の問題ではしばしば見られ、昨年度も出題されています。市販の参考書や漢字ドリルの中でも取り上げられやすい漢字であることからぜひ正解したい問題と言えます。
(5) 傍線部の内容を言い換える記述問題【やや難】
「効率化」という言葉の言い換えを20字で答える記述問題でした。例年、文章全体の構造を把握することが求められる問題が出題されていますが、この問題もその一つと言えます。文章における対比関係や具体例とそのまとめ部分を見つけることが求められます。加えて、字数が20字と非常に短いため情報に優先順位をつけて解答する必要があり、満点答案を取ることが難しい問題だったと言えます。
(6) 傍線部の内容に対応する具体例を探す抜き出し問題【やや易】
「前述した近年の技術」を具体的に例示している部分を抜き出す問題でした。具体例に関する問題はほとんど毎年出題されています。今回は傍線部中に含まれている「技術」というキーワードをヒントにすることで、その具体例を探し出すことが出来るためぜひ正解したい問題と言えます。
(7) Ⅰ傍線部の言い換え内容を探す抜き出し問題【標準】
「勝ち馬に乗ろうとする」とほとんど同じ意味の表現を文章中から抜き出す問題です。抜き出し問題は昨年度と同様の出題です。一般的な参考書で取り扱う抜き出し問題とは異なり、解答の箇所が傍線部から離れている傾向にあり難易度は高くなっています。ただ、今回は探す上でヒントとなるキーワードが傍線部中に含まれているため根気強く探すことができれば答えにたどり着きます。受検生の中で差が出た問題と言えます。
(7) Ⅱ傍線部と同じ意味で使われている多義語の選択肢を選ぶ問題【やや難】
傍線部で使われている「馬」という意味と選択肢で与えられている慣用句における「馬」の意味を吟味する問題です。慣用句に関する問題は昨年も出題されています。ただ、昨年度は受検生のみなさんでも聞きなじみのある表現が問題になっており比較的正解のしやすい問題でしたが、今年度の問題は聞きなじみのない慣用句が選択肢中にありました。そのため、自信をもって正解を選べた受検生が少なかったと考えられます。
(8) 空欄に当てはまる形で、傍線部内容を説明する記述問題【やや難】
傍線部の内容に対して理由を説明した文章が与えられ、その文章中の空欄にあてはまる内容を答える問題でした。前後の文章をヒントに空欄中の言葉を考える形式は例年出題されています。前後の言葉をヒントに課題文中から解答を探すことで正解できます。ただ、今回は具体と抽象の関係、対比構造を明確に把握しておくことが求められた上、解答の箇所も傍線部から離れていることから、単純な空欄記述問題とは異なっています。多くの受検生が解答に時間がかかった問題と考えられます。
(9) 段落の役割を答える記号問題【やや難】
指定された段落が文章全体において果たす役割を選ぶ記号問題でした。初めての出題形式ではありますが、一般的な参考書でよく見る問題です。文章全体の内容を把握する必要がある上に、明確な根拠をあげにくい問題なので自信を持って解答できた受検生は少なかったと考えられます。
(10) 会話文中の空欄に当てはまる言葉を抜き出す問題 【やや易】
課題文および会話文の内容を適切に把握し、空欄中に当てはまる言葉を課題文中から探す問題でした。会話文中の空欄に当てはまる言葉を考える問題は昨年も出題されており、以降のトレンドとなる可能性の高い問題と言えます。この会話文が以前まで出題されていた要約の代わりとも考えることができます。昨年に比べ前後の文章が大きなヒントになりやすいことと抜き出し問題であることから比較的解答しやすい問題でした。
(11) 文章Ⅰ・Ⅱから学んだことと自分の意見を述べる中作文【標準】
この問題では、①150字から200字で書くこと、②2段落構成で書くこと、③1段落目には文章Ⅰ文章Ⅱそれぞれから学んだことを、2段落目には和食文化を受け継ぐために、あなたにどうようなことが出来るかを具体的に書くこと、という3つの条件が与えられました。例年作文問題は出題されますが、過去5、6年の傾向から1段落目に「2つの文章のメッセージの共通点」を、2段落目に「メッセージの共通点を踏まえたあなたの意見」を書くよう指示していたのに対し、今年度は昨年度に引き続きメッセージの共通点を書く必要はなくなりました。また2段落目にもやや変化が起こりました。今までは自分が文章中から読み取ったことに対する意見を書いていたのに対し、今年度は出題者側から課題を与えられ、それに答える形で2段落目を書く形式に変化しました。昨年度同様、要約を書く必要がなくなったことで心理的ハードルは下がったと考えられます。昨年と同じ水準であり、例年よりも書きやすい作文でした。
3.必要な力と対策
本項では、§1の概要の中で述べた「西京附中の国語で問われている3つの力」に沿って、必要な対策を確認していきます。
①基本的な国語知識
本文内容を正確に捉える力を養うためには、まず①の「基本的な国語知識」が前提として必要となってきます。本を読んでいる時や問題を解いている時にわからない単語や熟語、ことわざ、慣用句が出てきたら辞書をひいて調べる習慣をつけましょう。また、市販の本や図書館の本を利用して普段からたくさんの文章にふれることで、語彙の正しい使い方を身につけることもできます。西京附中の検査Iの文章の出典となっている新書は少しレベルが高いですが、読書好きな人はぜひ挑戦してみてください。大人が読んでも読みごたえのある内容ですので、家族の人と一緒に読んで内容を話しあってみるのもおすすめです。記述をする中で漢字を間違えることが多い人は、漢字50問テストで90点以上や100点が取れるように漢字ドリルなどを何度も復習しましょう。 さらに、最近では、接続語や主語・述語などの文法事項や慣用句も出題されます。小学校の国語でも習う内容ですので、しっかりと理解しておきましょう。
②課題文を正確に捉え、条件に合わせて解答する能力
今年度もこの力が大きく求められました。②の能力を求める問題では、本文内容を正確に捉えること、そしてそれを解答欄におさまるように表現することの2点が必要です。文章の内容理解をより確実なものにするためには、指示語の指すものが何か、また接続語によって文章がどういう関係で結ばれているか、などに注目して読むことが必要です。読解問題に取り組む際、「なんとなく」で読むのではなく「この文がこういう関係だからここにこの接続語が入る」など、他人に説明できるくらい理解して文章を読み解いておくことが望ましいです。逆に言えば、全ての入試問題は答えが必然的に決まるようにできています。公平な採点を行う以上、「なんとなく」で答えが決まる問題は存在しないと思えば、読解問題に取り組む姿勢が変わってくるのではないでしょうか。このような読解問題の正しい解き方を身につけるためには、「解き方を学ぶ勉強」と、「解き方を練習する勉強」の両方が重要になってきます。洛ゼミでは普段から、読解問題の「解き方を学ぶ勉強」に力を入れています。通常講座で入試問題の国語に頻出の問題形式をパターンで解く方法をインプットし、秋以降の洛北・西京テーマ別特訓で、西京附中の形式により特化した解き方へと完成させていきます。
→洛北・西京テーマ別特訓についての詳細は【こちら】から。
③課題文と関連させて自分の意見を客観的に述べる能力
筆者のメッセージを読み取りまとめる力は、西京附中の国語において例年非常に重要視されています。まずは課題文の中で述べられているメッセージを的確に読み取る必要があります。そのためには、文章全体の中で具体例の部分と抽象的な議論の部分に分けることが求められます。具体例と抽象部分を分けることで筆者が特に強調したい内容を明確に捉えることが出来るようになります。そこで具体例と抽象部分を分けるためにも、文章の中で使われている意見表現に注目した読み方を身につけるとよいでしょう。また、段落分けの問題を練習したり、段落ごとのキーワードを探してタイトルをつけたりすることで、具体例と抽象部分を分けることができ、少しずつメッセージの読み取り力が身についていくでしょう。これらの練習は、課題文の要約をスピーディーに行えるようになることにもつながります。
自分の意見を客観的に述べる力を養うためには、まずたくさんの意見に触れ、それを吸収して自分のものにすることが重要になってきます。自分独自の意見を書く上で、他者の意見を知っていることは非常に有利になるので、普段から「学ぶこと」「生きること」など西京附中頻出のテーマの文章に触れておきましょう。
そして意見を文章にする力ですが、文章力は作文の訓練によって大きく底上げすることが可能です。書いたものをしっかり添削してもらって何度も直しを重ねることで、より良い作文が書けるようになってきます。そのため、洛ゼミでは、作文の添削を特に力を入れて行っており、提出された作文に赤ペンでコメントを入れるだけでなく、一対一で直接内容について話しあう機会も設けています。さらに、書き上げた作文に対して洛ゼミ生同士で話し合いを行う時間を設けることで、他者の意見に触れる機会を作ることにも力を入れています。