
この記事では、洛北附中 ( 洛北中・洛北高等学校附属中学校)で出題された過去問のうち、2019年度理科(検査II)の傾向分析をお伝えします。
この記事でわかること
・ 洛北附中2019理科の概要(難易度・新傾向等)
・ 洛北附中2019理科の各問別分析(合格するために落とせない問題、捨てる問題)
・ 洛北附中に合格するために必要な理科の力とは
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洛北附中理科の概要
例年の傾向
理科分野は例年大問2題構成で出題されており、「物理・化学」分野と「生物・地学」分野から1題ずつ出題されています。小問数は例年10問前後と安定していますが、比較的情報量が多く長い文章や資料を読んだ上で解答することが求められる問題が多いため、見た目よりもボリュームのある出題が続いているというのが例年の傾向です。計算問題の数は全体の問題数に比べて多くはなく、語句記述及び選択式の問題が多く出題されています。H28年度入試以降、出題される大問のうち1題は社会分野との融合問題として出題されています。
洛北附中入試の理科分野で必要とされている力は大きく分けて3つです。1点目は「資料や文章の中から必要な情報だけを素早く正確に抜き出す力」、2点目は「教科書の内容を正しく把握する力」、3点目は「科学的・論理的な考察をする力」です。
1点目の力について述べます。例年、洛北附中は分野を問わず実験・観察をテーマとした問題が出題される傾向にあります。そのような問題では、実験や観察の結果が主に表やグラフなどの資料や比較的長い文章にまとめられ、それらを用いて設問に答えるパターンが多く出題されます。資料や文章には解答に直接関係のない情報が多く含まれており、社会と理科合わせて50分という制約の中、不必要な情報に惑わされることなく解答に必要な数字や語句だけを素早く確実に見抜く力が求められていると言えます。
2点目の力について、教科書レベルの基本的な知識をもれなく正しく把握することが求められます。もちろん、洛北附中や西京附中の理科では、教科書レベルを逸脱する内容が出題されることはありませんが、特に洛北附中の理科では西京附中の理科と比較しても基本レベルの知識に重きをおいた出題がなされます。難しい問題の演習を多く重ねる必要はありません。分野の偏りなく、基本をマスターしておきましょう。
最後に必要となる力は、科学的・論理的考察力です。先述の通り、比較的情報量の多い文章や資料を誤解することなく読み取り正解を導き出すことが洛北附中の理科においては求められます。これを達成するためには、いたずらに問題集を解いて頭に問題を定着させるのではなく、前提となる教科書知識を深く理解し、それに基づいた科学的な考察を行う必要があります。中高一貫コースの高校部に昨年度より「サイエンス科」が設置されるなど、洛北附中及び洛北高校はともに「サイエンス」にかなり力を入れている学校です。洛北附中理科の入試問題は、科学的に考えることの出来る人材がほしい、というメッセージと受け取ることも出来るでしょう。
今年の傾向
H28年度から引き続いて、大問1問分は社会との融合問題として出題されていますが、それぞれ独立した問題として解くことが可能となっています。また、H28年度以前は大問全体を通して出題テーマが統一されていましたが、ここ2、 3年は一つの大問の中に複数のテーマが扱われるようになりました。特に今年度は、大問の中の全ての小問が異なるテーマや分野を扱っており、特定の分野からの出題がなかったということは特筆すべき点だと言えます。すべての分野を満遍なく対策していることが必須であったため、受検生にとってはなかなか解きづらい問題となっていたかもしれません。今年度の小問数と実際の解答欄の個数は、それぞれ11問と26個となっており、昨年度は8問と14個でした。単純に問題数で比較すると今年度は昨年度よりもボリュームのある出題がされていたと言えますが、昨年度出題された比較的程度の高い計算問題や記述問題、問題文に与えられた条件から思考して答える問題が今年度は出題されておらず、各小問が単純な一問一答形式として出題されたため、解答にかかる体感時間は例年通りであったと言えます。
今年度は各小問が単純な一問一答形式に変化したということもあり、洛北附中の理科で求められている力の比重が変化したと言えます。全体的に各問題の文章量が減ったことと、条件を読みとって答える思考型の問題が出題されなくなったことにより、論理的・科学的考察力に比べて教科書内容を把握する力がより重視されたと言えます。必要とされている力の比重が変化している中でも、大問2の(7)や大問3の(2)(4)といった洛北の伝統的な資料読み取り型の問題も出題されており、総合的に見ると問われている力自体は変化していないと言えます。
大問の中の全ての問題が関連性のないテーマを扱った問題になっていることは、洛北附中入試が始まって以来はじめてのことであり驚きを禁じえません。西京附中と比較すると、もともと基本に忠実な出題を続けていた洛北附中の理科ですが、今年度は特にその特徴が大きく現れたと言えます。科学的な人材を強く求める洛北附中だからこそ、基礎なくして応用なしという考え方に基づいた出題がなされていると捉えることも出来ます。
難易度について
例年の洛北附中の理科では、複雑な資料読み取り問題が出題されるなど、高度な情報処理能力と思考力を求められる傾向にあり高得点を出しにくい科目となっています。今年度は程度の高い計算問題や思考問題が出題されなかったことや、知識重視型の一問一答形式の問題が多く出題されたことにより、難易度が下がり、取り組みやすい出題となりました。
各問題の分析
大問2:二十四節季について(大問1・3は社会)
(1)表の空欄に当てはまる節季を選択肢の中から正しいものを選ぶ問題【やや易】
5つの選択肢から回答欄に合うように選ぶ問題です。例年の洛北附中にはない目新しい問題でした。聞き慣れない言葉が使われていますが、字感から推測して解くことが可能でした。国語力が試された問題でもあります。「立夏」「啓蟄」「大寒」「霜降」といった二十四節季の言葉から、厳密な季節を予測することは難しいですが、字感からある程度の季節を推測し、表に当てはめることは出来るでしょう。
(2)夏至と冬至の日照の違いについて選択肢から選ぶ問題【易】
夏至と冬至、方角の選択肢から正しいものを選ぶ問題でした。洛北附中で頻出の夏と冬の日照の違いについての問題です。教科書にも必ず現れる内容であり、中学入試において超頻出の典型問題であるため、必ず正解したい問題でした。また、洛北附中の2017年に似た問題で、より難しいものが出ているため、過去問をよく勉強した受検生には非常に解きやすかった問題でした。
(3)啓蟄に関する生物の過ごし方について選択肢から正しいものを選ぶ問題【標準】
文中の(e)(f)(g)のすべてに正しい記述が書かれているものを、6つの選択肢から選ぶ問題で、(2)と同様に頻出の問題でした。啓蟄という聞き慣れない言葉が使われていますが、言葉の意味が分からなくても、問題文の説明だけで十分に解ける問題です。啓蟄という言葉に戸惑うことなく、問題文をしっかり読むと、洛北附中(H26年度など)でよく出る典型問題でした。
(4)ろうそくの燃え方の説明文に合うように選択肢から正しいものを選ぶ問題【易】
文中の(j)(k)(l)に合うように選択肢の中から正しいものをそれぞれ選ぶ問題で、洛北附中では最近はあまり見かけない問題でした。ただし、洛北附中ではあまり見かけない問題ではありますが、本来であれば(1)や(2)に出てくるような基本的な知識の問題ですので、必ず正解したい問題でした。洛ゼミでは必ず演習する問題ですので、解答には困らなかったでしょう。
(5)水と水蒸気の体積に関して選択肢から正しいものを選ぶ問題【易】
3つの選択肢から正しいものを選ぶ問題で、洛北附中では頻出の問題でした。白露や霜降という聞き慣れない言葉が用いられていますが、問われていることは水蒸気が冷やされ、水になるときに体積が減るということのみであり、それに気づけばいつも通りの典型問題でした。特別な知識や計算も必要とせず、冷静に問題文を読むことが求められた問題でした。
(6)図中の温度計の測り方に間違いを指摘し、訂正する問題【標準】
図中の温度計の誤りを指摘し、適切な測り方を記述する問題で、記述式の問題は毎年出ているので頻出ではありましたが、誤りを指摘するという点で珍しい出題でした。内容としては、百葉箱についての理解が問われていました。間違いを指摘し、適切なものを記述するのは洛北附中としては珍しかったので、典型問題ではありますが、記述し辛かったかもしれません。しかし、記述に特化した講義も洛ゼミでは実施しているため、そのような講義で記述の練習をしていた受検生にとっては、きちんと点数をとれる問題でした。
(7)春分、夏至、秋分の気象データを読み取る問題【やや難】
4つの選択肢から正しいものを1つ選ぶ問題で、空欄のあるデータに穴埋めする問題は頻出でしたが、データを正しく分析した選択肢を選ぶ問題はむしろ社会や算数で多かったので、理科での出題は珍しかったです。選択肢に書いてある通り平均をとって、選択肢の正しさを確認していると膨大な時間がかかるので、大雑把に計算し、ある程度正しい値を出して選択肢の正誤を判断すれば限られた時間の中でも解ける問題ではありました。洛北附中の検査Ⅱは時間配分が厳しく、必要な情報を選んで素早く回答することが求められます。日ごろから時間を意識し、模試や過去問でそのような訓練を積むことが重要です。
大問3:会話文に関連した理科の総合問題
(1)潮の満ち引きの説明文の空欄に選択肢から正しいものを選ぶ問題【標準】
文中の(a)(b)に当てはまるものを5つの選択肢の中から選んで答える問題です。月の公転に関する問題で洛北附中では頻出の問題ではありますが、月の公転の周期を理解するだけでなく潮の満ち引きと月の公転の関係性を説明文から理解できないと解けない問題でした。月の公転と潮の満ち引きを絡める問題は珍しかったです。しかし、説明文を読めば煩雑な計算はいらない問題ですので、落ち着いて解きたい問題でした。
(2)陸地と海の面積当たりの雨量を計算する問題【標準】
与えられた表から計算して4つ選択肢の中から正しいものを計算する問題でした。データから読み取って数値を計算する問題は頻出です。選択肢で与えられた数値は大きく異なっているので、厳密に計算しなくともある程度の数値を出すことができれば解答できました。計算問題ではありましたが、選択式の問題で算数のように厳密な答えは求められていませんので、選択肢から答えを予測してもよい問題でした。
(3)フナムシが昆虫であるかどうかの理由を記述する問題【やや易】
フナムシが昆虫であるかどうかを選択肢から選んで解答する問題でした。記述式の問題は洛北附中では頻出です。昆虫の特徴について考える問題は中学入試で頻出なので、必ず正解したい問題でした。また、記述を要求する問題ではありますが、記述しやすい問題でしたので時間をかけたくない問題でもありました。洛北附中では珍しく理科の記述式の問題が今年の問題の中に2つありましたが、こちらの問題の難易度は高くはないため、必ず手を付けたい問題でした。
(4)塩分濃度の問題【標準】
説明文に合う語を選択肢から選び、与えられた表から数値を計算する問題です。与えられた表から計算する問題は洛北附中では頻出ですので目新しさはありませんでした。文章の情報量は多いですが、問題の核となる情報を抜き出せば簡単な計算で解答出来る問題で、この問題を解くまでにいかに時間を残していたかが正しい解答にたどり着けるかを左右しました。問題の文章の多さから最初から解かないと決めた人もいたかもしれません。しかし、計算としては簡単でしたので問題を読まずに捨て問と決めつけるのはもったいないです。大問2の(7)と同様に、必要な情報のみを選ぶことが求められていた問題でした。
必要な力と対策
本項では、§1の概要の中で述べた「洛北附中の理科で問われている3つの力」に沿って、必要な対策を確認していきます。
①資料や文章の中から必要な情報だけを素早く正確に抜き出す力
今年度入試においても合計3問の資料読み取り問題が出題されています。社会分野でも多くの資料読み取り問題が出題されることを考えると、対策しておく価値は十分にあると言えます。この力を身につけるためには、出来る限り日常の学習でグラフや表を扱った資料読み取り問題に慣れておく必要があります。洛北附中の過去問や、全国の適性検査型の入試を実施している中学校の入試問題から資料読み取り問題を扱っているものを選んで演習するのが良いでしょう。また、資料読み取り問題は社会分野でも頻出なので、社会分野での資料読み取り問題の演習は理科分野の対策においても十分に有効です。これらの問題を解く際には、いきなりグラフや表のすべてのデータに目を通そうとするのではなく、まず設問をしっかり読み、次にデータの中で関係しそうな部分だけを選択して読む必要があります。慣れるまでは、設問に答えるのにグラフや表のどの部分を使ったかを、線を引いたり丸をつけたりしてメモしておくようにしましょう。これに加えて、本番では限られた試験時間の中で素早く資料を読み解く必要もあります。一度解いた問題でも反復練習してより短い時間で解答出来るように練習をすることが大切です。洛ゼミで取り扱っている理科の演習問題の多くは、資料を活用した問題となっております。市販の問題集ではなかなか対策を行いにくい資料読み取り問題に対して、グラフや表の読み取り方などからレクチャーしていきます。
②教科書の内容を正しく把握する力
例年基本に忠実な出題が続いている洛北附中の理科ですが、今年度は特にこの力の比重が高まったと言えます。次年度以降も、基本的ながらも幅広い分野から出題される可能性が十分にあり、入念に対策を行っておきたい部分です。教科書の知識を身につけるということで、隅から隅まで教科書に目を通すことが最善の対策になると思われる方も多いと思います。もちろん知識のインプットは大事ですし、時間の許す限り教科書や資料集には目を通していただきたいのですが、この手の対策を行う場合には、知識のインプットよりもアウトプットが大事になります。教科書で読んだ知識を自らの頭の中で反芻し、ノートにまとめてみたり問題演習をしたりすることによって初めて知識が自分のものとなります。日頃から重要なキーワードは何回か紙に書いてみたり、市販の問題集でも良いので演習を積み重ねたりすることが大切です。
③科学的・論理的な考察をする力
1の概要でも確認した通り、比較的情報量の多い文章や資料を読み取って正しい答えを導き出すためには、情報を取捨選択し整理して結論を導き出す論理的思考力が必要とされます。今年度は例年と比較すると、この力の比重が小さくなったとは言え、次年度以降も同じ傾向が続く保証はありません。対策を怠ることのないようにしておきましょう。ただひたすら知識を暗記したり問題演習を重ねたりするだけでは論理的思考力を養うことは出来ません。例えば教科書を用いて知識の学習を行う際には、記載されている事実を鵜呑みにするのではなく、「なぜだろう?」という疑問を持って1歩深く踏み込んだ学習を行うことが必要です。実験観察問題の出題が多い洛北附中対策には、教科書の実験観察部分を入念に読み込んでおくことが必須となります。具体的には、実験・観察の結果を「どうしてこの結果が得られたのだろう?」「このデータからなぜこの結果が導けるのだろう?」と疑問の目を持って読んでみることが大事になります。また、教科書だけでなく普段自分が見聞きすることに対しても鵜呑みにせず、常に疑問の目を持ち続け、自分なりの考えを持つことで論理的思考力を養うことが出来ます。自分の考えていることが正しいかどうかを学校の先生や友達、家族と一緒に議論することも非常に効果的です。