
この記事では、洛北附中(洛北高校附属中・洛北中)の2020年国語の出題に関する分析をご紹介いたします。
1.例年の傾向
適性をみる検査Ⅰは、毎年2題または3題の大問が出題されます。
特にここ数年は、読解問題2題、長作文1題の3題構成で出題されています。
読解問題で出題される課題文は、新書の中から自然科学系・教育系の説明文や評論文が選ばれる傾向があります。課題文の字数はそれぞれ1000~3000字程度です。
洛北附中入試の国語で必要とされている力は大きく分けて3つあります。
1つ目は「基本的な国語知識」
2つ目は「本文の内容を正確に理解し、条件に合わせて解答する力」
3つ目は「自分の意見を理由とともに説得力をもって書く力」です。
大問1と2で1つ目と2つ目の力を、大問3ないし大問2の最後で3つ目の力を問う出題がされています。
1つ目の「基本的な国語知識」を問う問題では、漢字・語句・文法の基礎知識等が主に選択形式で問われます。特に、接続語の補充問題はよく出題される傾向にあります。昨年度は例外的にこの力を問う出題が全くありませんでしたが、今年度は漢字・語句・文法の基礎知識を問う出題があったこと、そして基礎知識の理解は読解の基礎となることから、来年度以降も引き続き対策する必要があると言えます。
2つ目の「本文の内容を正確に理解し、条件に合わせて解答する力」を問う問題では、本文の内容を言い換えて説明する問題、本文における説明の根拠(理由)を問う問題、本文全体の内容を問う問題などが出題されています。出題形式は、選択問題や、抜き出し問題、記述問題があります。
3つ目の「自分の意見を理由とともに説得力をもって書く力」を問う問題では、与えられたテーマに対して361字~450字で自分の意見を述べる作文問題が出題されています。以前は、「これまで体験したこと、あるいは見たり聞いたりしたことを例にあげる」という具体例を説明する部分に重点が置かれていたのに対して、ここ3~4年は「なぜそう考えるのか」という理由の説明が重視されています。
2.今年の傾向
今年度の適性をみる検査Ⅰは、大問数が3題、小問数が11題であり、大問数、小問数ともに昨年度と比べ変化はありませんでした。本文の分量は両大問ともにやや増加しましたが、文章レベルは昨年度並でした。全体的に易しい内容だったと言えます。
大問1の渡辺祐基『進化の法則は北極のサメが知っていた』は、マグロ類やホホジロザメなどが多くの食べ物を摂取しなければ生きていけないという深刻なデメリットを抱えつつも高い体温を持つ理由について述べた文章でした。大問2の河野哲也の『じぶんで考えじぶんで話せるこどもを育てる哲学レッスン』は哲学とは真理の探究であり、人々は他人との対話を通じて問いを発し、相手を理解し、自分との差異を明確にするということについて述べた文章でした。大問3の作文は、「私たちが学習するうえで『知識を身につけること』と『考えること』が大切である理由」というテーマでした。このテーマは昨年度の「2つの力が必要な理由」を問う作文と同じ形式であり、過去問の対策を入念に行っていた受検生と行っていなかった受検生とで大きく差が分かれた問題でした。
今年度の問題では、「基本的な国語知識」「本文の内容を正確に理解し、条件に合わせて解答する力」「自分の意見を理由とともに説得力を持って書く力」の3つの力がバランスよく問われました。昨年度は「基本的な国語知識」を問う出題はありませんでしたが、今年度は語句・漢字・文法などの知識を幅広く問う出題が4題ありました。また、昨年度は30字以上の記述問題の出題が1題であったのに対して、今年度は3題出題されたことから、「本文の内容を正確に理解し、条件に合わせて解答する力」がより強く求められました。
読解問題に対しては、文章量がやや増加したこと、及び30字以上の記述問題の出題数の増加から、より素早く本文の内容を理解し、解答を自分自身で再構成する力が例年より強く求められたといえます。
また作文では、H30年度に初めて出題されて以来再び「2つの事がらが大切な理由」形式で書くことが求められました。構成を整理して2つのテーマを説明する力と過去問演習の質とが得点に大きく影響したといえるでしょう。
3.難易度について
洛北附中の国語は、高得点を取ることが十分可能な分野です。
特に読解では西京附中と比べてオーソドックスで解答しやすい問題が多いので、確実に得点できるように対策しておきたいところです。
一方作文は、通常の学習での対策が難しいため、専門的な指導・対策を行ったかどうかで得点が大きく左右されうる分野です。今年度の読解問題は、文章レベルは比較的平易だったものの、文章量が増加したこと、30字以上の記述問題の出題が増加したことをふまえると、難易度は昨年度と比べ難化したといえます。また作文に関しては、2つの力が必要な理由を整理した上でそれぞれを具体的に説明するという難易度の高いテーマでしたが、昨年度と同じテーマの問題であり、対策を入念に行っていた受検生に対しては比較的書きやすかった作文といえます。