
この記事では、洛北附中(洛北高校附属中・洛北中)の2020年社会の出題に関し、分析をご紹介いたします。
1.例年の傾向
適性を見る検査Ⅱは、ここ3年間、大問1が社会分野、大問2が理科分野、大問3が理社両方の分野から出題されています。
出題形式は多様ですが、資料カードやレポートを用いた出題や、グラフや表に関する出題が特徴的です。
出題分野は歴史・地理分野からの出題がほとんどで、歴史分野では古代から現代まで幅広く問われており、地理分野では7年連続で都道府県に関する問題が出題されています。また、緯度・経度や世界地理に関する出題も近年では頻出です。
公民分野からの出題は少ない一方で、出題された場合は差がつくことが多くなっています。分量に関しては昨年度までは大きな変化はありませんでしたが、今年度においては例年よりも分量は多くなっていました。
洛北附中入試の社会分野の出題で求められている力は大きく分けて3点です。
1点目は「教科書内容の知識を関連付けて理解する力」
2点目は「自分の持っている知識を問題と結び付け、条件に応じて活用する力」
3点目は「グラフや表などの資料を適切に読み取る力」です。
「教科書内容の知識を関連付けて理解する力」
島の形や写真の時代を選択させるような比較的単純な知識問題も出題されますが、特に歴史分野では、出来事の時代を並べ替える問題、ある時代に起こったことを選択する問題、人名と出来事を結び付ける問題などが出題されています。歴史上のある出来事について、時代背景・場所・人物・その出来事が起こった理由や目的・その結果などまでおさえておきましょう。
「自分の持っている知識を問題と結び付け、条件に応じて活用する力」
「自分の持っている知識を問題と結び付け、条件に応じて活用する力」とは、例えば「漁かく量が0」という条件から内陸県を疑う、水力発電の仕組みから水力発電所の分布を推測する、などの力のことです。
問題用紙に記載されている情報の中から注目すべき点をピックアップして解答を導き出すまでの過程においては、問題と自分の持っている知識を結び付ける力が必須です。
ただし、初めて見る資料の場合、そこで要求される知識レベルはそれほど高度でないことが多く、段階的に知識を結び付けていけば必ず解けるようになっています。
また、記述問題の場合は字数制限があることがほとんどのため、解答内容を条件に合わせて的確に表現することも必要です。
「グラフや表などの資料を適切に読み取る力」
これは、グラフなどの資料を適切に読み取れれば、社会の知識がなくても得点出来る問題も多いため、ぜひ磨いておきたい力であると言えます。
先に述べたような問題としては、H29年度の大問1(4)、H30年度の大問1(6)Ⅱ・大問3(5)、昨年度の大問3(8)の適切な文を選ぶ問題などが出題例として挙げられます。
ただし、設問文が長く条件を見落としてしまう場合や、細やかな計算を必要とする場合も多く、確実に正解するのがやや難しい問題でもあります。
2.今年の傾向
洛北附中の今年度の適性をみる検査Ⅱは昨年度と同様、大問1が社会分野、大問2が理科分野、大問3が理社両方の分野から出題されていました。
大問1と大問3の小問数の合計は昨年度より2問増加した11問でした。さらに各小問においても問題が分かれていたため、解答にかかる時間は昨年度と比べると大幅に増加したと考えられます。
出題形式は例年同様、選択肢で答える問題が大半で、語句を答える問題が数問されましたが、記述問題が昨年度と比べ2問増加し、3問となったことが大きな変化の一つと言えるでしょう。
また例年通り、「漢字で、ひらがなで」「正しい記号を2つ、すべて選びなさい」「15字以上20字以内」など条件がある問題も多く、注意力が求められました。
出題分野については、大問1は地理分野から3問、歴史分野から2問、また公民分野から1問出題されました。大問3の社会分野の問題は歴史分野から1問、地理分野から4問の出題でした。
昨年度同様、例年より地理分野からの出題割合が高かったと言えます。地理分野においては資料を読み取り答える問題が大半でした。また、近年の頻出分野である都道府県や世界地理などの分野からの出題もありました。
歴史分野においては例年通り、縄文時代から戦前に至るまで幅広い時代の選択肢が提示されていました。公民分野においては、国会の機能等について詳細を聞く出題もあり、差がついた出題であったと考えられます。
教科書に出てくる基本的な語句を問う問題や、時代と出来事を結びつける問題が今年度も出題され、例年通り「教科書内容の知識を関連付けて理解する力」が問われました。また、2010年と2015年の人口を比較した地図から読み取れることを答える問題、地形の特徴を地図と資料から読み取る問題の出題にあるように「自分の持っている知識を問題と結び付け、条件に応じて活用する力」、「グラフや表などの資料を適切に読み取る力」の2つの力を必要とする出題が今年度は多くありました。このように、今年度の検査においても例年通り上記3つの力が問われました。
新傾向としては、大問1(4)の地球儀を使って、日本の北の端から西の端までの距離を調べる方法を問う出題が挙げられます。このように与えられた条件のもと、算数的思考を使い、実用的な方法を考えだす問題が適性をみる検査Ⅱの社会分野で初めて出題されました。
3.難易度について
洛北附中の社会は教科書レベルの知識とそれを応用する力をつければ十分に満点が狙える問題です。今年度の問題は基本的な知識を問う問題が多かったと言えますが、大問1(6)Ⅱや大問3(3)のように資料を読み込む必要がある問題が多かったため、難易度としてはやや難化したといえるでしょう。