
この記事では、2020年西京附中(西京高校附属中・西京中)で出題された社会の入試問題に対し、分析をご紹介いたします。
1.例年の傾向
適性をみる検査Ⅲの社会分野は、毎年2,3題の大問から構成されています。大問ごとに地理分野、歴史分野に分かれた出題がされており、歴史分野の方がやや分量が多い傾向にありました。
地理分野は様々な分野から農業や工業といった一つのテーマに絞った内容であることが多く、自分の考えを答える問題があることが特徴的です。
歴史分野については、特定の観点について通史的な知識を問うなど、満遍なくどの時代からも出題されています。また、H28年度、H30年度入試では公民分野からの出題も見られました。
西京附中の社会分野の出題で求められている力は、大きく分けて3点あります。1点目は「基本的な知識力」、2点目は「知識を自分の言葉で説明する力」、3点目は「資料を読み取る力」です。
「基本的な知識力」
1点目の「基本的な知識力」を問う問題では、教科書内容の知識が問われます。その中でも人物や出来事・道具・施設等の名前を答える問題や、選択肢から選ぶ問題が多くなっています。
また、ある物事に関する正しい記述を選ぶ問題が毎年出題されており、単語だけではなくそれについての説明や、そうした物事の背景にある理由、目的まで理解しておく必要があります。単純な知識の量ではなく、知識を体系的に習得できているかを重視していると言えるでしょう。
また、既習の知識を元に、課題への解決法を提起する問題があることも特徴です。
「知識を自分の言葉で説明する力」
2点目の「知識を自分の言葉で説明する力」を問う問題では、ある出来事や物事について説明したり、その理由や目的を説明したりする問題が出題されています。
特徴的な点は、穴埋め形式で記述する問題が多く出題されていること、資料に関する問題が毎年出題されていることが挙げられます。1つ目については、15字や10字などの短い字数制限があることが多く、説明を短い言葉でまとめる力が求められているといえます。こうした力は地理分野、歴史分野、公民分野の全ての分野で問われています。
「資料を読み取る力」
3点目の「資料を読み取る力」を問う問題は、西京附中の社会分野で非常に大きな特徴であるといえます。
この力を問う問題には資料から読み取れることを答える問題や、資料中の人物・出来事・道具・施設等について説明する問題があります。資料の種類も表、図、グラフと幅広く、多くの情報の中から必要な情報を読み取り、それを使って分析・説明できるようになってほしいという西京附中からのメッセージだと受け取ることができるでしょう。
また、難易度が高い問題では、複数の資料から関連性・因果性を読み取り、既習の知識と合わせて記述するなど総合的な情報処理・伝達能力が求められます。
2.今年の傾向
今年度の適性をみる検査Ⅲの社会分野は、大問数が3問、小問数が11問でどちらも昨年度とあまり変化はありませんでした。しかし、問題文の文量や資料の情報量は増え、小問内での解答文量も増加しており、総合的な問題量はやや増加しました。また、読み取る資料の数は昨年度の14個に比べて今年度は15個とやや増加し、情報量の多いグラフによるものが増え、受検生にとって解答する上で読まなくてはならない分量は昨年度よりも増加しました。
出題形式は、理由・目的を説明する記述問題が2題みられました。穴埋め形式での理由説明問題は昨年度の4題から2題へと減りましたが、1題あたりの分量は今年度の方が多くなりしました。
自分の考えを記述する問題は、昨年度に引き続き今年度も出題されませんでした。
分野に関しては、歴史分野からの出題が5問、地理分野からの出題が6問でしたが、地理分野の資料問題が多かったこともあり、バランスの取れていた昨年度に比べ地理分野にやや重点が置かれたものになりました。歴史分野の出題内容としては、例年の傾向通りに古代から近世に至るまでの幅広い時代からの出題であったといえます。
また、都市の発展に関する設問があるなど地理分野との融合問題も見られました。一方地理分野に関しては、日本の気候と農業、工業分野の知識を問う問題が出題されオーソドックスな日本地理が主でした。
特に世界地理はH29年度から登場するようになり、今年度は応用的な設問として登場するなど重要度が増し、西京附中の洛北化の傾向は今年度も継続しました。
今年度の社会分野の出題では、「基本的な知識力」や「資料を読み取る力」が例年に比べて必要になったと言えます。この力を使う代表例に大問5(4)、大問7(2)が挙げられ、両設問ともに発展的な内容について、基本的な知識と資料を基に考えるものです。また、大問6(5)などは教科書に明確な答えがあるわけではなく、教科書中の複数の知識を用いて解答を組み立てる必要があり、受検生にとってかなり難しい設問であったと考えられます。大問5(3)の気候についての記述問題にみられるように「知識を自分の言葉で説明する力」も依然として必要な能力です。
今年度は昨年度に続き、1つの大問に地理分野と歴史分野が混在するといった、近年見られなかったような問題構成を取りました。1つのテーマに対して複数の切り口を持ち、体系的に物事を理解すべきであるといった、西京附中からのメッセージを感じます。
3.難易度について
例年の西京附中の社会分野は、基本的な知識を使えば解ける問題が多く、資料問題での読解力、計算力は必要となるものの、他科目と比べてそこまで取り組みづらいものではないといえます。学習量が点数と直結しやすく、得点源になりやすい科目です。
しかし近年は求められる推論の質が高まり、また書きにくい短文記述が登場していることから、受検生にとっては取り組みにくい問題になっていると思われます。
今年度の問題においても大半の問題は教科書レベルの知識で解けるものですが、一部、前述のとおり複数の切り口から思考しなければ解けない設問など難易度が高い出題もありました。よって、難易度は昨年度並みであり、例年よりやや難化した水準が保たれたと考えられます