
本記事は洛北・西京附中対策専門塾「洛ゼミ」による洛北附中(洛北高校附属中・洛北中)の2020年入試 社会の問題別分析です。
難易度や解くのに必要な力について各問題ごとに分析しています。
大問1 調べ学習をもとにした日本について総合問題
(1)日本の歴史の転換点に関して、基本的な事項を問う問題【やや易】
日本で武士として初めて太政大臣になった人物を漢字で答える問題、元寇の結果、及び刀狩と検地の結果、社会がどのように変化したかを記号で答える問題、各時代に起きた出来事を歴史の古い順に並べる問題の3問がありました。基本的な知識を問う出題と、洛北附中で頻出テーマである「変化と理由」を聞く出題でした。いずれの知識も教科書に載っており、正解したい問題ですが、各時代に起きた出来事を歴史の古い順に並べる問題では関東大震災を示す選択肢が日本軍がハワイのアメリカ軍基地を攻撃したことと不平等な修好通商条約を欧米諸国と結んだことの間に起こった出来事を理解しておく必要性があり、ここで正解できた受検生とできなかった受検生がわかれたと考えられます。
(2)水墨画が描かれた時代及び同じ時代の伝統文化について問う問題【標準】
水墨画が描かれた時代を選択する問題と、同時代の伝統文化について説明されたものをすべて選択する問題でした。時代と出来事及び事象を結びつける問題は昨年度も出題されるなど頻出問題です。水墨画が描かれた時代が室町時代であることは必ず正解してほしい問題ですが、室町時代の文化をすべて選ぶ問題は例年、文化を苦手とする受検生が多いことから差がついた問題であったと考えられます。
(3)国会について選択肢から正しいものを選ぶ及び会話文空欄補充問題【標準】
国会の歴史、働き、制度等について述べた選択肢から正しいものを2つ選ぶ問題と会話文中に当てはまる言葉を5文字で答える問題でした。近年では非常に珍しく公民分野の知識の定着を見る出題でした。国会について選択肢から正しいものを選ぶ問題は国会の歴史、働き、制度等について詳しく知識が求められたため、差がついた問題であったと考えられます。一方、税金を納めることが国民の義務の一種であることは基本の知識なので必ず正解したい問題でした。
(4)地球儀を用いて、実際の距離を求める方法を思考する問題【標準】
与えられた条件をもとに日本の西の端と東の端の実際の長さを推測する方法を考え出す問題です。グラフや資料を用いることなく、算数の思考法を用いる必要があり、このような問題は今年度が初めて出題されたため、新傾向の問題と考えられます。昨年度まで出題されたことない問題なので、本番戸惑った受検生も多かったと考えられます。また、算数的思考で求め方がわかったとしてもそれを文章で表現する必要があったため、差がついた問題だったと考えられます。
(5)各都道府県の人口の変化について選択肢から正しいものを選ぶ問題【易】
各都道府県の人口の変化について表記された日本地図を読み取り、選択肢から正しいものを2つ選ぶ問題でした。都道府県に関する出題、及び資料読み取りに関する出題はともにする頻出です。都道府県の場所と名前を覚えておくこと、及び資料の読み取りをすることができれば解ける問題なので、必ず正解したい問題でした。
(6)日本の災害対策及び地形の特徴に関する小問集合【標準】
各地で起こった災害をもとに災害対策を行った各選択肢を地図中から選び出す問題、及び地図と資料からある土地の地形の特徴を記述する問題及び日本の川の特徴について述べた文章の空欄を15字以上20字以内で記述する問題の小問集合でした。地図や地形、資料を題材とした問題は例年頻出の分野です。各選択肢の自然災害がどの地域で起きたものなのかは教科書には載っているものの細かい知識を求められたものでした。また、地図と資料の読み取り問題、日本の地形の特徴に関する記述問題はいずれも思考力を要する問題だったため差がついた問題だったと考えられます。
富岡製糸場を題材とした総合問題
(1)会話文から内陸県及び長野県についての語句及び選択問題【易】
会話文中にある内陸県についての説明の空欄補充問題、及び群馬県と岐阜県の間にあるという条件をもとに長野県を「ひらがな」で答え、その県を示した図を選択肢から正しいものを選ぶという問題の小問集合でした。都道府県に関する問題は洛北附中では7年連続で出題されるなど毎年出題されると考えられる分野です。上記より、洛北附中の受検生は都道府県に関する分野は十分に対策していると考えられるため、本番の正答率はかなり高かったと考えられます。必ず正解したい問題でした。
(2)古代日本の文化史を問う問題【標準】
渡来人というキーワードを元に、文化史を整理する問題でした。また、写真資料を分析し奈良時代の基本的な文化史を問う問題も併せて出題され、この小問では、古代日本の文化史が広く問われました。文化史や写真問題は、例年一定数の出題がみられます。「渡来人が伝えたもの」を完答する問題はやや難しかったため、受検生で完答できた人は少なかったと考えられます。ただ、消去法で解くことは可能な問題ではあるため、できれば差をつけられる問題でした。資料が保存された建造物を選ぶ写真問題については基本問題のため、必ず正答したい問題でした。
(3)世界各地の雨温図を題材とした資料読み取り問題【やや易】
世界の各都市についての雨温図を資料をもとにしてそれぞれ正しいものを選択する問題及び各都市について説明した文章から正しいものを一つ選び選択する問題でした。世界地理を題材とした問題は近年では頻出です。また、世界の気候については小学校では未修分野ですが、資料を読み取くこと及び既習の知識を用いることで解ける問題である「未知問題」と呼ばれる出題であり、洛北では頻出の出題問題です。世界の気候についての問題で、戸惑った受検生も多かったと考えられますが、落ち着いて資料を読み解けば確実に解ける問題でした。できれば正答したい問題です。
(4)明治時代の生糸の輸出についての資料読み取り問題【易】
1888年の日本の生糸の輸出額に占める生糸の割合及びその出荷国について述べた正しいグラフを選択肢の中から選ぶ問題でした。与えられた資料をもとに、グラフの読み取り問題は洛北附中入試では頻出の出題です。太平洋戦争を行ったときの日本の同盟国と敵国を理解しておけば、資料を読み取ることで確実に解ける問題でした。できれば正解したい問題です。
(5)等高線に関する地図の読み取り問題及び記述問題【やや易】
等高線が記載された地図が与えられ、各地点から流れる水が太平洋側に流れるのか日本海側に流れるのかを等高線をもとに考え、与えられた選択肢から正しいものを選ぶ問題及びある地点から流れる水がたどる道すじを記入用紙に書き込む問題でした。等高線に関しての出題は近年ではあまりありませんでした。しかし、等高線に関する基本的な知識があれば等高線の説明に関しては地図中に丁寧に記載されているため、地図を確実に読み取れれば正答できる問題でした。いずれもできれば正答したい問題です。