
この記事では、この記事は、西京附中(京都市立西京高校附属中・西京中)の2020年(令和2年度)入試問題のうち、算数の出題について分析します。
1.例年の傾向
適性をみる検査Ⅱ(算数)では、毎年5題の大問から構成されています。西京附中の算数では、例年「割合」「速さ」「立体」を扱う問題が出題されており、これらに加えてプログラムを利用する問題もよく出題されています。例年大問1は表を利用した割合の問題であることが多く、割合の基礎力は必須となっております。速さを扱う問題では昨年度よりグラフを用いる問題が出題されています。グラフを用いる速さの問題は難易度が非常に高くなることが多く、しっかりとした対策が求められます。
西京附中の算数分野の出題で求められている力は大きく分けて3点あります。
1点目は「与えられた問題文や図から必要な情報を抽出する力」
2点目は「地道に書き出すことで解く力」
3点目は「ゴールから手繰り寄せる力」です。
「与えられた問題文や図から必要な情報を抽出する力」について
洛北附中・西京附中の適性検査では問題文がとても長かったり、問題文が簡潔な代わりに図やグラフが与えられていたり、問題を解くうえで必要な情報を自分の力だけで読み取る必要があります。長い問題文から読み取れる情報は一つとは限らず、複数書かれていることが多いため、それらを統合する力が必要になります。また、図やグラフから読み取る必要のある情報も一つとは限らず、抽出した情報を新たに自分でまとめる、メモする、という行動が求められます。
「地道に書き出すことで解く力」について
西京附中の特徴である「計算だけでは解くことのできない問題」をいかにして得点するかが合否を分ける大きなポイントになります。しかし、単にがむしゃらに書き出していると、ミスが起こりやすいため、表や樹形図を利用して整理しつつ、条件に沿って書き出していく必要があります。さらに、書き出した結果から帰納的に規則性を考え、それを計算に応用することも必要になります。地道に試行して、規則を思考することが西京の算数には必要不可欠です。
「ゴールから手繰り寄せる力」について
この力はより高難易度の問題を解く際に必要とされます。西京附中に限らず、入試の算数ではいわゆる「初見」の問題に立ち向かう必要があります。そこで求められる力がこの力になります。与えられた情報と問題文をただ見比べて考えているだけではとうてい次の一歩が踏み出せないような問題もたくさんでてきます。そんなときに、「この問題の答えを求めるためには何が分かっていればよいのか」「これらの情報から何が言えるのか」、とゴールから自分の立っている場所まで戻ってくる、いわば逆算的な考え方をできるかどうかが大きなポイントになってきます。
2.今年の傾向
今年度の適性をみる検査Ⅱは、例年と同じく5題の大問から成り立っており、小問の数は全部で22題と50分で解くには少し分量は多く感じられました。
しかし、例年の傾向に従い今年度も「割合」「速さ」「立体」を扱う問題が出題され、プログラムの問題も出題されました。
大問4の速さの問題では、昨年度に引き続きグラフが用いられており、非常に難易度の高い問題になっていたと考えられます。これらの問題は、過去問をきちんと対策していた生徒にとっては目新しい問題ではなく、勉強の成果を発揮できる問題であったと考えられます。
一方で、大問2の平面図形に関する問題では、問題文も単純であり、平面図形の問題を解く力が問われている問題となっており、”数学的な”思考力を必要とする問題になっていました。算数の計算が苦手な生徒にとっては厳しい問題であったかもしれません。
さらに、立体の問題では昨年度までは立方体を積み上げる問題が多かったのに対し、今年度では展開図を扱う問題であり、展開図の問題を対策していなかった人にとっては少し厳しい問題になりました。しかし、洛ゼミで教えている独自の解き方(頂点マーク)を利用することで解くことができる問題でもあったので、洛ゼミ生は点数の取りやすい問題であったと考えられます。
今年の西京附中の算数では、情報を抽出する力・地道に書き出す力・ゴールから手繰り寄せる力、それぞれが必要とされていました。1点目の情報を抽出する力は、大問1と大問3、2点目の地道に書き出す力は大問4と大問5、3点目のゴールから手繰り寄せる力も大問4と大問5で必要とされていました。
上述の通り、立体を扱う問題で展開図がテーマになっていたことに加え、平面図形の問題が出題されたことも新傾向と考えられます。また、今年度は推論の問題が出題されておらず、場合の数や組み合わせを利用する問題は出題されていませんでした。
3.難易度について
例年の西京附中の算数は、単なる計算だけでは解けない出題が多いため、幅広い分野や出題形式に慣れ、きちんと対策をしていなければ高得点の難しい科目です。今年度の西京附中の算数は、傾向に沿った分野からの出題も多く、きちんと過去問で対策をしていた生徒にとっては取り組みやすいものだったと考えられます。平面図形や展開図の問題など、過去問対策だけでは対応できない問題に出会ったときの対応により、得点に差がついたと考えられます。