第三篇 教師がやるべきことは何か
「元堀川校長」荒瀬克己 ×「元堀川生徒会長」坂上菖一郎。
<第二篇 荒瀬克己の葛藤>で荒瀬は、堀川高校を “ハイマート=ふるさと” と表現。
つづく第三篇、教員を目指す坂上が描く理想像、荒瀬が伝える教員の姿がうかがえた。
理想の教員像を聞いてみた
坂上さんは教員になりたいということだが。
今後教員にどういう力が求められるかということを考えたら、先ほど荒瀬先生使っていた言葉でもあるんですけど「雑多な力」というのを思いついて。
これからいろんなことを考えていかなくてはならない世の中で、いろんなことを“考えるきっかけ”を提示する力が必要なのかと思っています。
ぼくにとっての“学びのきっかけ”というのは何かと何かの繋がりがぼんやりと浮かび上がったとき、その繋がりがなんなのか確かめてみたい、というものであったと思います。
そういう面で「雑多な力」というのに僕が込めたい思いは 、その繋がりをちらっと見せることができるような幅広い知識、確かめてみたいと生徒に思わせるような伝え方や話し方も含まれているんじゃないかと思います。
大したことだと思います。教員にどんな力が必要かってなかなか一言ではね、多分言えなくて。
どんな仕事をするにもいろんな力が必要で、あなたがおっしゃったこともとても大事だと思います。
教師は「風の当て方」を示す
ちらっと見せて、というが話がありましたが「見せる」のではなく、その繋がりに「気づくような場面をつくってあげたら」いいですよね。「気づけたか、すごいね!」と。詐欺師みたいだけれども(笑)
そういう面はこれからますます大事になっていくと思います。
子どもたちは相当守られていますよね。「安全、安心、簡単、手軽」と私はよく言いますけど、これをよしとする社会といいますか。もちろん家も学校も安全安心でなければならないし、簡単で手軽のほうがいいですよね。そして親も、子どもをとても大切にする。今を大切にするのは確かに大事なことですけど、じゃあ未来はどうなのか。それを考える必要があります。
昔の人がよく言った言葉で、「かわいい子には旅をさせよ」。かわいいって何か。かわいがるってどうすることか。旅というものをどう設定するのか。難しいですよね。
安全であること安心であることは絶対ですけど、それが担保されている状態で、不安も危険も経験しない。面倒なこと、複雑なことも経験しない。かわいいからと言っても、ホントにかわいいから守るというのがいいだろうかと思いますよね。
まさに今の大人の子育てってそういう感じじゃないですか? 守り慣れてしまって、親は風のあてかたが分からない。
でも…難しいですよね、加減というのが。私たちは手加減、加減がわからなくなっているんじゃないんですかね。そういう社会のなかで、その“加減”というのをあえて打ち立てていく、と言いますかね。そういう力がこれから先生になる人には大変重要じゃないかと、私はそう思います。
突然、卒業生坂上に“ある問いかけ”をする荒瀬。口ごもる坂上に、荒瀬が言った言葉とは。
第ゼロ篇 荒瀬克己の「堀川高校」
――荒瀬が目指した「堀川高校」はどういう生徒を求めているのか?
第一篇 堀川で得た「学び」
――元生徒会長が堀川で得た「学び」・京大特色入試との関係とは。
第二篇 荒瀬克己の葛藤
――「堀川のやり方がすべて正しいとは思っていない」その真意を探った。
第三篇 教師がやるべきことは何か
――荒瀬の描く“教師のあるべき姿”とは。
第四篇 若者よ、すぐに答えるな
――卒業生坂上に見えた、若者の理想。
番外編 堀川制服奮闘記
――“世界にたった一つの”チェックのスカート。その秘密とは。