第四篇 若者よ、すぐに答えるな
「元堀川校長」荒瀬克己 ×「元堀川生徒会長」坂上菖一郎。
<第三篇 教師がやるべきことは何か>で荒瀬は、「風のあてかた、その加減を示す」という教師の姿を描いた。
つづく第四篇、坂上が荒瀬に立ち向かった。
“面倒な”若者になってほしい
金子みすずの「みんな違ってみんないい」、知っていますよね。あなたはそう思いますか?
みんなちがってみんないい…。どういう「いい」なのか、というのをまた考えなければならないと思うんですけど…
僕としてはみんないいであってほしいとは思うんですが…
大変いいと思います。ここに来て、あなたに会えてよかったと、そういう思いになりますね。こういう問いに“スパッと答えられない人”であってほしいと私は思っています。なんでもかんでも答えられるのはしゃべっていても疲れるし、本当に私の言いたいことわかっているのか?と思ってしまう。どう言っていいのかわからない、だから「口ごもる」。本当に大切で、そのことの持っている値打ちに対して謙虚に、誠実に、しっかりと見ていく、ということをしてほしいと思います。
さて、私はみんな違ってみんないいとはちっとも思っていません。私はひとり残らず違わなくてよいと思うんですよ。そうすれば平和も実現できますよ。考え方が違うから争いが起きる。そう思いません?
あなたと私との間でもそう。広い世界に出ていかなくても、考え方、コンテクスト、背景が違う人と一緒に生きていかなくてはならない。私たちは、そういう「面倒くさい世界」で生きているんです。
それで「みんなちがってみんないい」とは全く思わないのですが、しかし、違うということが事実だ。事実、現実に対しては謙虚でなければならない。違わなければいいのに。これが現実なんですね。
「面倒さ」は楽しい
僕は面倒さというのを楽しいな、と思ってしまうところがあります。
高3の文化祭、クラスでのアトリウムパフォーマンスでもそうでした。ある程度の人数の集団があると、意見の集約が必要となります。いろんな発想があるなかで一つのものを作っていくために、すんなり賛成してくれればいいのにな、と途中では思います。でも振り返ると、「あのときあの意見があったからこそいいものができた」って思うんです。だからこそ必ずしも違ったことが悪だとは思いません。
私も違うのが悪いと言っているわけではありませんよ。違って絡んでごちゃごちゃになっている状態のほうが遥かに強いじゃないですか。そういう社会になればいいなとは思うんですけどね。
その社会にはみんなちがって「みんな必要だ」。そこを実感としてもてるかというのは大事だと思います。
そういうところにいちいちこだわる面倒な若者になってほしい。そしてそんな「現実」を生きていく、「しぶとさ」を持ち、知恵をだして「こんな生き方があるんじゃないか」と示す、そういうことができるような人間に育ってほしいですよね。
堀川高校が私服だった時代、校則に付された説明は、「100メートル全力疾走できること」。
第ゼロ篇 荒瀬克己の「堀川高校」
――荒瀬が目指した「堀川高校」はどういう生徒を求めているのか?
第一篇 堀川で得た「学び」
――元生徒会長が堀川で得た「学び」・京大特色入試との関係とは。
第二篇 荒瀬克己の葛藤
――「堀川のやり方がすべて正しいとは思っていない」その真意を探った。
第三篇 教師がやるべきことは何か
――荒瀬の描く“教師のあるべき姿”とは。
第四篇 若者よ、すぐに答えるな
――卒業生坂上に見えた、若者の理想。
番外編 堀川制服奮闘記
――“世界にたった一つの”チェックのスカート。その秘密とは。