正直、あんまり京大教育学部について調べてなかったんですよ。
「かっこいい人になりたいな」って思ったこと。そこが京大を目指したスタートだったのかもしれません。
高1では35人中32位。そこから京大教育学部を目指し、教科書だけで受験勉強に奮闘。大学院進学でさらに研究を進めた彼女が語る、「研究の楽しさ」と「受験勉強の楽しさ」とは。
森岡優季子 福井県若狭高等学校出身。京都大学教育学研究科教育科学専攻修了。中学では吹奏楽部でサックスを担当、高校ではESA部で英語でのプレゼンテーションや翻訳作業を行った。地方出身で地域との関わりを濃く持ちながら育ち、大学院では「地域と学校」をテーマに研究。卒業後は心機一転し、金融業界という新たなフィールドに挑む。
京大を目指したきっかけは、かっこいい「京大生」
京大教育学部を目指したきっかけは何だったんでしょう。
元々は学問の内容とかじゃなくて、“京大生”に惹かれたんです。
高3の春に、先生に言われて、京大を第一志望とする人だけが集まるセミナーに参加しました。当時、私には到底届かないと思っていたから、その時はまだ京大に対して本気ではなく、軽い気持ちで参加したんです。
でもそこで、現役京大生と京大志望の受験生との交流があって変わりました。京大生、キラキラして見えて「ああなんか京大生すごいかっこいいな」と思った一方、高校の頃は私と同じ悩みを持っていたことを知って。二つの面をその時初めて知って、ぐっと身近な目標になったんです。
こんな人らと大学生活を送れたら楽しいやろうなと思ったのがきっかけです。
だから“京大教育学部”の学問分野に惹かれたというよりは、人・学ぶ環境に惹かれました。
京大への憧れですよね。その中でも教育学部、と。
その時、「何に興味ありますか?」って聞かれて、話してみたら意外と話せたんですよ。
私こんなことが勉強したいです、というのを初めて言語化して、「自分はこんなことやりたかったんや」って、人と話しているうちに気づいたというか。
それが「人間ってなぜこんな風に育っていくんやろ?」っていう興味でした。人間関係において人がどうやって発達していくのか、ということに興味があると気づいたんです。
振り返ると中学生の頃の人間関係のいざこざを経験していたのがきっかけだったなと思います。
でも正直、あんまり京大教育学部については調べてなかったんです(笑)
現役京大生に、「入れば自分次第で何でもできるよ」って言われて。それを信じていました。実際今、したい勉強をできています。
勉強したいと思う源は何なのでしょう。新しいものを知るのが好きとか?
うーん…勉強すればするほどいろんな角度で物事を考えられるようになる、今はそれを目指して勉強しています。
中学生の時からそう考えていた?
全然(笑)中学生の当時は多分、ただ「かっこいい人になりたいな」って、そう思ってたんだと思います。
じゃあ自分にとってかっこいい人ってどんな人だろうと考えたとき、いろんな考え方ができる人かなあって。それが私にとってのあこがれだなって後から気づきました。
かっこいい人になりたい、が京大を目指すことにつながったんですね。
そうかも。あとは私、高校生の時はこれ!といったやりたいことがなくて、将来の夢も決まっていたわけではなかったんです。だから、いざ大学を出るその時にやりたいことをできる環境を自分に用意してあげるっていう。
「迷ったら難しいことやっとけ。一度難しい方を選べばできることが増える」
って昔担任の先生に言われて、その影響もあるのかも。今でもそれを軸にして選択しているから、「あの時あっちを選べばよかった」ってならずに、自信を持てていると思います。
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「夢は教師」だけではない、幅広い京大教育学部
京大教育学部ではどんなことを勉強されたんですか?
私は教育方法学について専門的に学びました。教育学部は3回生から3つの専攻に分かれます。現代教育基礎学系、教育心理学系、相関教育システム論系。
現代教育基礎学系は学校教育系、哲学系といった、教育の中身を学ぶイメージ。
それに対して相関は教育行政とか教育社会学、比較教育など、教育の枠組みを学ぶというイメージですね。
心理は認知心理と臨床心理、どちらも学べます。
その中でも現代教育基礎学を専攻された、と。
一回生の時、入門科目として全ての専攻について広く浅く話を聞けるんです。
元々は心理をやりたかったはずなんだけれど、聞いていて一番ワクワクするのは学校教育の方かな、って大学入ってから変わりました。
教員免許はとっていますか?
取っています。
京大の教育学部はあまりとらないイメージなのですが、なぜとられたのですか?
確かに、京大の教育学部は、“教員養成系”の教育学部とは別物です。
でも「免許を取る=学校の先生になる」では全くないと思います。
私はそもそも大学に入った時点で将来どのように進むか全く決めていなくて。OLになるのか、公務員になるのか、先生になるのか。だから「絶対教師になる!」ではなかったけれど、選択肢を残すためにとりました。
なるほど、どれくらいの人が取っていますか?
現代教育基礎学の人は結構とっている人がいるかも。でも心理系に進む人はほとんど取らない。相関の人は半分くらいかな。全体で半分くらいだと思います。
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教育方法学、最先端の研究
専門で学ばれた教育方法学について教えていただけますか?
教育方法学は、学校教育で生徒をどんな風に教育していくかを考える学科です。
私は福井県の中でも田舎の出身で、学校と地域との関わりが濃かったんです。例えば地域のおじいちゃんを学校に招いて郷土料理や昔の遊びを教えてもらったり。
でも大学で京都に来て、それが普通ではないと知りました。
地域と学校の結びつきにはどんなことが大事なんだろう?ということから、「学校が村を育てる」ということを実践したある先生にについて、研究しました。
京大で学んだことで、何が一番楽しかったですか。
文系の研究というのは、基本は読書です。誰かが先にやった研究について研究する、そこから始まります。
ある先生がされた研究について研究するとなったら、その先生の書いた本、その先生について書いた本を沢山読んで、書いてあることに理論の抜け漏れがないか?もっと別の考え方ができるのではないか?と見ていきます。
でも、私が研究したいと思ったことは今までの蓄積があまりなかったので、私は読書の枠から出て、私の研究していた先生の身内の方に会いに行きました。「こんな研究をやっているので、こんな文献が見たいです」と言ったら「そんな文献見せてと言われたの初めてだ」といわれて。今までに未公開の資料を見せてくれたんです! 他にも、地元の方にインタビューをして、当時の写真をいただいたり。明かされてこなかったその先生の実績が明らかになって。その時、楽しい!って思いました。
文系の研究は、今まで書かれた古いことをさかのぼって調べることだけじゃなくて新しいことも山ほど出てくるし、それによってその先生の理解が深まると、教育への理解も深まる。日本の教育にも役に立つこともある。そういう意味で面白いなって思います。
『下から4番』から『文系1位』に
かなり勉強熱心のようですが、そうやって“頑張れる”のって、なぜなんでしょう?
高校のときの経験がきっかけになっているのかも。
中学生のときはずっと学年1位だったんですけど、高校に上がって地域では1番の進学校に進んだら、数学がクラス35人中32位で。井の中の蛙が大海を知った瞬間でした(笑)「ほんまにやばい」と思って、そっから自分に厳しく勉強を始めたと思います。
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最終的には?
高1の時はみんなそこまで勉強しない。だから勉強してる人が分かりやすく伸びるんです。高1・高2でじっくり基礎を固めて、リードすることができました。高3になると、文系では1位をとれるようになりましたね。
成績を伸ばせた原因は何だと思いますか?
勉強を頑張ったといっても、毎日塾に行ったり、参考書を読み漁るとかしていたわけじゃないです。宿題・予習・復習ちゃんとやるということ。
あとは、担任の先生と教科担当の先生にひたすら質問していました。勉強が分からなかったら「聞く」ことができる力を持っていたのが、私のアドバンテージだったかな。
勉強が分からなかったら「聞く」ことができる。
先生って教えるのが好きだから、聞いたら何とかしようと教えてくれるんですよ。 「質問ある人来いよ」って言われても、大体誰も行かないじゃないですか。私は行ってたな。朝、職員室前で先生を待ち伏せしてしたこともありました(笑)
高校のころ頑張ったことは、勉強ですか?
そうですね、でもそれが楽しかった。クラスメイトと一緒に勉強するのも楽しかった。志望校は違うにしろ、大学受験っていう共通の目標に向かって、教え合ったり、休憩の時一緒にジュースに買いに行って他愛もない話をしたり…。こうやって振り返ると、周りの人とたくさん話しながら、楽しく勉強していたと思います。
最初は「頑張らないとやばい」でやっていたから楽しくなかった。でもやってたら、やったらできるようになるんやってことに気づいて。じゃあこんな風に工夫してみようかな、とか、攻略していくのが楽しかったですね。
やればできるし、できるようになれば楽しい。
ただ“やればできる”って、やった人だけ、気づくことができることだと思います。
森岡優季子さん、ありがとうございました。
森岡さんが高校生のころに出会った、“高校生の頃は同じ悩みを抱えていた、キラキラした京大生”の姿に、今の森岡さんが重ねられました。
読んでいる皆さんも数年後、“憧れの京大生”になれるよう、応援しています。
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