「私は受験を機に変わったかもしれない」
「『京大を目指す』っていうのは初めてできた高い目標」
そう語る彼女は、受験を通して何を感じどう変わったのか。
イマイチ本気になれるものがみつかっていない高校生に、ぜひ読んでもらいたいインタビューです。
曽根 惇那 滋賀県立彦根東高校出身、京都大学法学部卒業。 高校時代は部活や学校行事を楽しみながら、こつこつ勉強する姿勢を忘れずに3年間を過ごす。 大学では政治を学び、学習塾の講師を続ける中で、教育を通じてより良い社会を作り出すことに大きな可能性を見出す。
受験を経て、負けず嫌いな自分に
高みを目指す必要はないですよね?なんで京大に?
私は高校生のとき、あまり目標がなくて、特に夢もなくて。外国に携われたらいいなあってぼんやり考えていたくらいしか、明確な目標がなかったんですよ。
だから、「京大を目指す」っていうのは初めてできた高い目標でした。
せっかくだから、どうせだったら一番高いところに目標を持ってった方が頑張れるかなって思って。
東京に行きたくなくて東大はやめました(笑)
逆に、将来への目標がなにもなかったからこそ、いろんなことができそうなところに行きたいなって思って京大を目指したのかもしれません。「自由なところ」って聞いてはいたので。
今受験の一年間を振り返ってみてどうですか?
今まで振り返って一番頑張った半年って言える気がする。
中高と、部活とかでも勝敗気にするタイプじゃなくて、ずっと負けても悔しくなかったんです。頑張ってるからいいかなって思っていました。
でも、受験では初めて結果に固執できたんです。結果に向かって、自分の最大限の努力をできた年だと思います。
なんでそれができるんだろうね、受験って
私は受験を機に変わったかもしれないって思っています。意外と負けず嫌いな自分に気付けました。
大学生になってからも、受験のときの負けず嫌いな一面は残っていました。
バイトで大きめの仕事を任せてもらったことがあったんです。周りに話を聞きながら進めてたんだけど、もらった意見を反映しつつも、自分の考えは消したくないと思って(笑)
今では、結果にこだわる自分に慣れたっていうか…。やってみるとこの方が楽しいな、って思えるようになりました。
どうして法学部を受験すると決めたのですか
はじめは、海外に興味があったから、外国語学部に入ろうとしていたんです。例えば、神大の国際文化学部を志望学部に挙げていて、もっと英語を勉強したいなと思っていて。
でも、二年生の秋くらいの面談の時期に担任の先生に言われた言葉で意識が変わりました。
「これからの時代外国語しゃべれるのはみんなになっていくよ。だから、それだけを学ぶより、他のことも学んだ上で喋れる方がいいんじゃない?」って。
法学部にしたのは、名前がかっこよかったからです(笑)
それとその時、歴史、特に世界史を勉強するのが好きだった。つまり社会の勉強をするのが好きだったんです。それで、高校生の私的に一番社会っぽい学部=法学部を志望しました。
弁護士になるとか、法律を勉強するのを目標に入ったというよりは、自分の興味について勉強したいと思って選びました。
時間の使い方を学んだ高校生活
志望校決定から本格的な受験勉強の開始まで、意識は変わりましたか?
京大を意識して生活するようになったのと、めちゃくちゃ早くから赤本を買ってました。部屋に飾ってました(笑)
高2の4月くらいに1回解いてみたのがよかったなと今になって思います。自分がどこまで頑張らなくちゃいけないのかゴールを意識するようになったんですね。
それに、近くにゴールがあるとやる気が持続します。赤本見ると、「やらなきゃ、勉強しなきゃ」って気持ちが湧いてきました。
そういった、自分をモチベートってだけじゃなく、単純に赤本買うのは嬉しかったです。「私、京大を目指してるんやで」みたいな(笑)
高校時代の生活について教えてください
吹奏楽部に入っていて、コントラバスを弾いていました。吹奏楽部は最後の大会が他の部活より遅くて、引退したのは8月くらいです。周りのみんなは春から受験勉強一色の生活を送っているのに、私たちだけ部活、ということに多少不安はありました。
だから、というわけではないのですが、時間の使い方を意識していましたね。部活前の朝の時間の使い方とか、終わってから電車までの時間とか。もっと俯瞰したものでいうと、部活引退までのおおまかなスケジュールとか。
電車の時間で勉強時間を決めるのは、すごくおすすめの勉強法です。毎朝1時間学校で勉強できる電車に乗って、放課後2時間勉強して帰りの電車に乗る。
我ながら、習慣づけれたのが1つの武器になったな、と思っています。
でも、細かい1日の予定はあえて立てないようにしていました。だいたいこういう勉強をしよう、くらいですかね。
この時間の使い方は、受験だけでなく応用できると思っています。
普段サークルとバイトに重きを置いて、かなり忙しい大学生活を送ってきたと思っているんだけど、4年間たくさん楽しいこともしてこれたんですよ。
友達と遊ぶだったりとか、いっぱい旅行行ったりだとか。特に自分の中でルールになってたのは、半期に一回絶対海外旅行に行くことでした。普段の生活はもちろん忙しいんですけど、そこだけは譲らずにいました。
今思えば、この時間の使い方は、受験時代に学んだことかもしれませんね。
だいたいが大事なのかもしれませんね
受験生って勉強時間で競いがちじゃないですか(笑)
3時まで勉強してる周りの人につられて、完璧に予定組んで、遅くまで勉強して…っていう生活に変えてみたんだけど、無理がたたって体調を崩してしまったんですよ。朝型だったから、体に合わなかったのかな。
そこで、完璧を追うのは違うなって気付けました。だいたいここまでできたらいいかなっていう勉強方法に変えていきましたね。
テンション上がらないときは、数学の勉強するのやめてました(笑)
ズバリ!自分はどんなタイプの受験生でしたか?
周りを気にして体を壊すまでは、ひとに合わせてしまうところに悩んでいました。自分のペースで本当にいいのか、自信がなくて。
例えば、周りはこんなに遅くまで頑張ってるのに私は早く寝てもいいのかとか(笑)
周りを見てみても、こういうタイプ結構いると思うんです。むやみやたらと塾の授業いっぱい取っちゃうとか。
今振り返って言うと、自分に言ってあげたいことは色々ありますね(笑)
別に自分に合ってさえいれば、正しいやり方も悪いやり方もない。周り見ちゃう気持ちはめちゃくちゃわかるんだけど、できるだけ、自分はこうだからって思えるようになるといいんじゃないかな。
私みたいに、他人を気にする人はそれが難しそうとも思うけど(笑)
どうして気にならなくなったのですか?
受験期に、お父さんから30分くらい話をされたんです。
「周りの人に合わせることがいいことじゃない。今の自分で頑張れることをとりあえずやっていくのが一番自分にとっての近道になる。実際頑張れる力はあると思ってる」
…みたいな話をしてもらって。
自分が今やれることを、どんどん積み上げていけばいいんだよってことを教わりました。
人を知りたくなった大学生時代
大学では何を学んでいましたか?
基本的に政治系について学んでいました。法学部っていうと法律の勉強のイメージが強いかなって思うけど、政治の方にどっちかというと興味があったので。
一番心に残ってるのは、アメリカ政治学です。
ゼミに入っていたんですが、アメリカの政治だけじゃなくて社会問題とかについても講義してもらって。トランプがなぜ受かったの社会の仕組みとか、政治の裏側を教えてもらって、自分にとっては考えたこともなかったから興味深かったです。
政治っていっても政治だけでなく、歴史メインな部分もあったりして、これまでの科目でいう「社会」みたいなところがあるんだよね。だから、社会の勉強が好きな子は政治に向いてると思う。
そもそも政治って一言にいったって思ったより広い分野の勉強をしているんですよ。逆に、ただの歴史の授業もあったりして、楽しかったですね。
政治学はどういうところが面白く感じたのですか?
習う内容が、自分たちが住んでる社会や動かしてる人の話とかだったのもあってか、法律より身近に感じて興味を持ちました。
自分が知らない新しい社会の見方・視点を教えてもらって、その見方から考えたら社会がどういう状態かを考える授業があったりして。そういう指標を知っていくのが楽しかったです。
政治学では、社会を俯瞰する方法を教えてもらうことができます。意外とイギリスと日本は似てるんや、とか。日本はこんなに海外から影響を受けてるんや、とか。
みなさんが今意外に思うように、私も当時衝撃を受けました。
でも、法学部は卒論がないし、ゼミも任意だし、何を専門にしてたか言いにくいんですよね(笑)
ちなみに、ゼミは半期で変わります。三回まで取ることができるし、関連がないものでも大丈夫です。実際私が取っていたのも、刑法・アメリカ政治・政治過程論・福祉系とかなりバラバラでした。
就職先と学んだことがイコールでないことについて、聞かせてください。
就活の時にちょっと悩みました。司法書士になろうかな、とかも考えました。でも、法律の勉強があんまり好きじゃなかったから…。
社会を勉強する中で、漠然と今の社会はよくないから、なにかしたい。そのアプローチ方法を習ったと思っています。教育系にいくんですけど、それも社会を変えるアプローチのひとつかな。大きい企業のやってることを知り、こういうやり方で社会が変わっていくと習いました。
だから、今までやってきたことが全くつながってないとは思いません。
知識を学んだからこそ、この考えがあって、意義を感じながらやれるんじゃないかなと。
私はこう考えているから、逆に最初から目標がある人をすごいなとも思います。飽きっぽいから、1つの分野に、4年、6年、一生涯かけるのを考えられなかったんですよ。
法学部は、専門性を高めるのも、教養を身に着けるのもどっちもできます。だから、お互い影響しあえるし、いい刺激をもらえたと思っています。
曽根さん、ありがとうございました。
結果にこだわれなかった高校生時代。
家族に支えられながら、“京大”という大きな目標を目指すことで変わった自分。
大学でも受験期に学んだことを活かし、これからも変わり続ける曽根さんの将来がとても気になるインタビューでした。
なにかに本気になることで人は変われる。
みなさんも本気になれる「なにか」を探してみてください。
きっと新しい世界が見えるようになるはずです。