
この記事は専門学科対策塾リングアカデミー講師の野本先生が書きました。
堀川探究学科群理科の特徴
堀川理科の特徴は、いわゆる理科の問題ではないことです。
中学3年間で習う内容を知っていることは大前提に、中学範囲を超えた内容を考察する問題が非常に特徴的です。
2018年入試までは大問数が1つで、あるテーマに沿った自然科学的な問題が出題されていました。
近年は、大問数が増え、様々な内容が扱われるようになってきていました。
しかし、今年は大問数が2つと、また以前の傾向に戻りつつあるようです。
大問別分析
大問1
今年の大問1は物理範囲からの出題で、水圧に関する問題でした。
前半は単なる知識・グラフ問題ですが、後半に移るにつれて自然科学のテイストが強くなっています。
ペットボトルに開けた穴から流れ出す水の速さについての考察を深める必要があり、水圧について原理から考えさせられる問題でした。
大問2
今年の大問2は生物範囲からの出題で、蒸散に関する問題です。
大問1に比べると、かなり標準的な中学理科の問題でした。
しかし、記述問題では自然科学的な問題も見られ、学校で習った内容を表面的に覚えただけでは、なかなか満点回答を叩き出すのは難しかったかと思います。
今回は大問1より、堀川理科の特徴が最も現れている1問をピックアップして解説し、その傾向を考察します。
2021年度堀川探究学科群理科 至極の一問
問題
大問1 問7
1秒当たりに排出される水の体積Q[cm^3/s]を「流量」、水が流れる向きに垂直な方向の水の断面積S[cm^2]を「水流の断面積」、水の流れる速さv[cm/s]を「流速」とすれば、v = Q/S である。
蛇口から一定の水量で流れ出る「水流の断面積」が小さくなっていく理由を述べよ。
(一部改題)
解説
蛇口から出る水の量はひねり具合が同じとき常に一定ですが、水が下に落ちれば落ちるほど細くなっていきます。
それがどうしてかを考える問題となっています。
水流の断面積・水量という単語に注目しましょう。
このどちらともが入っている式が、前提条件として与えられていますね。
つまり、与えられている v = Q/S において、今考えたい状況は
Q:一定
S:小さくなる
ということは、式に当てはめると
v:大きくなる
ということがわかります。
したがって、水の速度が大きくなることが説明できればよいとわかります。
さて、では、どうして水の速度が大きくなるのでしょうか。
ここで中学3年生の物理で出てくる「力学的エネルギー保存則」を思い出します。
力学的エネルギー保存則とは、「高いところにある物体が持つ他の物を変形できるエネルギーと、動いている物体が持つ他の物を変形できるエネルギーの和は一定」ということです。
高い位置にあればあるほど、落ちたときに下に与える影響は大きくなります。
すなわち、高い位置にある物ほど、位置エネルギーを多く持っています。
その物が落ちるときに、位置エネルギーがどんどん運動エネルギーに変わっていきますが、その総量は変わりません。
すなわち、下に位置する物ほど、 運動エネルギーが大きい = 動く速度が速い ということができます。
だから、蛇口より下であればあるほど、流速が大きくなり、断面積が小さくなっていきます。
ちなみに…
私は大学で流体力学の基礎である「水理学」という授業を取っていたのですが、そこで習うベルヌーイの定理を使ってもこの問題を考えることができます。
詳しく知りたい人は、是非とも「ベルヌーイの定理」で検索してみてください。
まとめ
このように初めて与えられる知識を、どのように自分の知っている知識と結びつけられるかが堀川理科を解く鍵になってきます。
また、近年出題分野を広げようとする傾向が見られるので、あらゆる分野において探究的観点を持ちながら日頃の学習を行わなければなりません。
中学範囲の理科を完璧にすることは大前提。+αとして、日ごろから様々な物理、化学現象に興味を持ち、知見を深めようとする習慣をつけておきましょう。
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