受験生に限らず、成績が伸び悩んでいる人、
志望校の過去問を見て啞然(あぜん)としている人、
テストの点数がどうしても80点に届かない人、色々いると思います。
各々原因があると思いますが、勉強量をこなしているのに成績が良くならない人の原因ははっきりしています。勉強の仕方に問題があるのです。
問題集を解き、間違えたところを赤で直して、、、の繰り返しだと思いますが(それでいいのですが)、本当に直したところを「わかって」いますか?
いや、そもそも「わかる」とはどういうことでしょうか?「わかる」ということがどういうことかわかっていなかったら、勉強法の改善のしようもありません。
そこで今回は、「わかる」とはどういうことか、一緒に考えてみましょう。
・・・
A子とB男が付き合った!!!
あなたは昨日、学校でこんなことを耳にしたとします。
⑴一昨日、B男はA子と付き合った。
しかし、今日学校に行ってみたら、
⑵今日学校に行ったら、B男は落ち込んでいた。
B男は大好きなA子と付き合うことができ、笑いが止まらないはずなのに、どうしてでしょう。この時のあなたの反応はこうです。
:わからない。
では、昼休みこんな噂を聞いたらどうでしょうか。
⑶昨日、A子が他の男性と二人で歩いているのを見た人がいた。
なるほど、B男は、A子の裏切りを知って落ち込んでいたのかもしれません。このときあなたの反応はこうです。
:わかった。
しかし、夜、友達からLINEでこんな話を聞きます。
⑷その男性は、A子のお兄さんだった
すると、先ほどの「わかった」は再び「わからない」に戻ってしまいます。A子は裏切ってなどいないのですから。
:わからない。
心配したあなたは、翌日学校で、B男に直接たずねてみました。すると、彼はこう言いました。
⑸お兄さんは、A子を溺愛しており、二人の交際にかなり口を出す。
これで、ようやく⑴と⑵の事実がつながりました。⑶、⑷とも矛盾しません。「わかり」ました。
:わかった。
この場合、⑴「A子とB男は付き合った」と⑵「B男は落ち込んでいた」の事象を矛盾なく説明するには、⑸「お兄さんはA子とB男の交際に口出ししてくる」という事実を知る必要があります。⑷「A子が二人で歩いていた男性はお兄さんだった」で、「わからない」となってしまったのは、⑶「A子が他の男性と二人で歩いていた」において、「その男性はA子のもう一人の恋人だ」と勝手に決めつけてしまったからです。
もし、「A子は二股をかけている」という憶測のままで、⑸「お兄さんはA子とB男の交際に口出ししてくる」という事実を知らなかったら、この問題を解けるでしょうか?
・B男とA子が遊園地に2人で楽しそうにしていた、という事実は◯か×か?
⑸を知っている人なら、お兄さんの目の届かないところでA子とデートできるB男がさぞ嬉しいことを理解するでしょう。
しかし、間違った憶測のままであったら、B男は浮気されているの我慢して楽しそうにできるのか、そもそも浮気を知らないから楽しそうにできるのか、浮気されていたら楽しいわけないから×など、考えられる可能性が増えてしまいます。よってこの問題は解けません。
簡単な英語で「わかる」を考えてみよう
さて、この話とあなたの勉強法はどう関係してくるでしょうか。
⑴I have a guitar.という文を、主語をyouにかえて疑問文にしたら、こうなります。
Do you have a guitar?
ではここで、あなたは自分で勝手に、「動詞haveの使われる疑問文はdoから始まる」というルールを推測したとします。すると、次の問題を解くことは難しいでしょう。
⑵I have played the guitar before.
×Do you have …
正解は、Have you played the guitar before? です。
なるほど、これは現在完了の文章でした。ここであなたは、「haveと過去分詞の使われる疑問文はhaveを前に出す」というルールを推測するでしょう。しかし、この理解で次の問題に対応できるでしょうか。
⑶I will have finished my homework before she comes home.
×Have you …
正解は、Will you have finished your homework before she comes home? でした。これは未来完了の文なのです。
あなたが正しく知るべきルールは、
X:「助動詞が使われる疑問文は、助動詞を主語の前に出す」ことと、
Y:「willと現在完了のhaveは助動詞である」ということでした。
この二つを知っていれば、⑵の問題と⑶の問題を間違えることはなかったのです。
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この二つの例から見て取れるように、最も核心的なルールを知り、それを用いて問題に挑むときにはじめて「わかる」ことができるのです。
一つ目の例で例えば、
・B男は学校でA子によそよそしくしている、という事実は◯か×か?
という問題に対して、
⑶における憶測を用いて答えても、⑸の真実を知って答えても、どちらの場合もあなたの回答は×でしょう。しかし、憶測による回答は「わかった」ことにはなりません。それでは、「遊園地問題」のような応用問題には答えられないのです。
本当の意味で「わかる」には、XやYのルールを教科書でしっかりと確認せねばなりません。逆に言えば、XとYのルールを知れば、無駄なく応用問題もクリアできることでしょう。
今まで解けなかった問題を解けるようになり、成績を上げるには、しっかりと基本のルールに立ちかえって、本当に「わかる」ということが必要だと、私は思います。
みなさんも、自分が本当に「わかって」いるかどうか、自問してみてください。A子が、裏の顔をもっていると、疑っていませんか? 彼女は本当は純粋で一途な女の子ですよ!
参考文献:有井行夫『マルクスはいかに考えたか―資本の現象学』桜井書店、2010年.