
例年の傾向
適性をみる検査Ⅰは、毎年1~2題の大問から構成されています。ここ数年は、長めの文章1つと短めの詩や文章に対して、読解問題・作文問題が出題されています。洛北附中に比べ、文章量も多く4~5ページに渡って課題文が与えられています。また、出題される課題文は、新書を中心に科学・教育・道徳観などをテーマにした評論文や詩から引用されることが多くなっています。
西京附中の国語で求められている力は
- ①基本的な国語の知識
- ②課題文について正確に理解する力
- ③課題文と関連させて自分の意見を説得力をもって述べる力
があります。
「①基本的な国語の知識」を問う問題では、ことわざなど言葉の使い方に言及した問題、空欄に当てはまる接続語を選ぶ問題などが出題されています。特に接続語の問題はひんぱんに出題されるので、普段からなれておくことが大切です。
「②課題文について正確に理解する力」を問う問題では、文の構造について 考える問題や、本文内容の言い換え・説明をする問題、理由を問う問題などが出題されています。 出題形式は、選択肢から選ぶものだけはなく、自分の言葉で説明する記述式も出題されます。どのような条件で問題を解かなければいけないのか、問題ごとに丁寧に確認することが必要になります。 加えて、段落の役割を問う問題など、文章の展開構造を問う出題が非常に多いのも西京附中の特ちょうです。限られた時間の中でスピーディーに読解・解答するためには、具体と抽象の考え方を理解し、文章をふかんする力を身につけることが重要です。
「③課題文と関連させて自分の意見を説得力をもって述べる力」を問う作文問題では、「2段落構成 で150~200字で書く」という出題が続いています。 また「2つの課題文の共通点を書くこと」、「課題を達成するためにどのようなことができるか」など年度によって異なる指示が出されることもあるので、どのような条件があるのか、丁寧に確認することが必要になります。 これら3つの力は、それぞれ深く関連し合ったものです。「③自分の意見を分かりやすく述べる」上で「②課題文についての正確な理解」をすることが求められますし、③や②をするためにはそもそもの「①基本的な国語の知識」が欠かせません。 漢字・熟語の練習や読書を習慣にすること、また、作文や会話によって自分の意見を述べるトレーニングをすることで、こうした3つの力を実践的に身につけることができるでしょう。
今年の傾向
今年の適性をみる検査Ⅰは、大問数が2、小問数が8であり、昨年と比べると大問数は変わりませんでしたが、全体の問題数は減少しました。 本文について、例年長文+短めの文章というセットで出題されていましたが、今年は2つ目の文章が初のポスターでの出題となりました。 本文の分量については、昨年と比べ、1つ目の文章の長さは大幅に増加、2つ目の文章(今年度はポスター)の長さは大幅に減少しました。 文章レベルについては、昨年度と比べて1つ目の文章はやや難しくなりましたが、2つ目の文章(今年度はポスター)は大幅に易しくなりました。 1つ目の文章の福岡伸一「生命とは何か?」は、筆者の学問的な経験と、その過程で発見した「動的平衡」という考え方について説明した文章でした。 2つ目の文章であるポスター「子供たちの資源も大切に」は、現在行われている過度な資源利用の危険性と、持続可能な社会をつくる大切さを訴えた作品でした。
今年度は、例年と同様に、②の力に含まれる「文章の展開構造を見抜く力」が重視されていました。段落の役割を問う問題などに答えるためには、文章をただ順番通り追っていくだけではなく、文章全体をふかんして全体の議論の流れや展開の変化などを見抜くことが大切になります。 こうした力を身につけるためには、 ・具体と抽象の考え方を理解した上で、文章を具体と抽象に分けて読むこと ・問題集でだけ文章を読むのではなく、読書経験を多く積んでスムーズに文章理解できるようにすること が有効です。
今年度は作文問題の形式が大きく変化しました。 まず2つ目の課題文が短い文章からポスターへと変化したことで読解が容易になりました。 加えて、例年は2つの課題文の共通点を自分の言葉でまとめる必要がありましたが、今年度は共通部分のまとめがなくなり、「③自分の意見を説得力をもって述べる力」にさらに重点が置かれた出題となりました。 また、課題文とはやや違った観点から議論の内容をまとめ直す出題があったのは、昨年度からの新傾向だと言えます。 昨年度は作文問題において、「挑戦」というキーワードで筆者の考えを自分でまとめ直す(抽象化する)ことが求められましたが、今年度は同様の出題が問3や問5(2)において見られました。たとえば問5(2)では、法隆寺と伊勢神宮の違いについて、「動的平衡」という観点から新たにまとめ直すことが必要となります。 このように、昨年度以降、課題文においてすでに説明されていることを簡略にまとめる(抽象化する)というレベルを超えて、自分で考えて新しくまとめ直す力が重視され始めていると言えます。今後傾向として定着するかはまだ分かりませんが、こうしたより高いレベルの問題にも対応できるように、 ・具体と抽象についての理解を深めておくこと ・文章を読んだ時に、内容を自分の言葉でまとめる習慣を付けておくこと というようにして、文章をよりよく理解するための基礎力を鍛えておくことが大切になるでしょう。
今年の難易度は?
例年試験時間に対して課題文の文量が多く、また読解問題の中には、解答の根拠となる部分が傍線部と離れていたり、本文中に散らばっていたりする記述問題も少なくないため、難易度は比較的高いと言えます。そのためか、近年は合格者平均点が50点を下回る年度もありました。
今年度の国語は、作文の共通部分のまとめがなくなった一方で、1つ目の課題文の分量が昨年度よりも大幅に増加し、文章レベルも難しくなりました。 また、読解問題でいくつか明確な根拠を持って答えるのが難しい問題があったため、当日苦労した受検生も多かったのではないかと思われます。 以上のことから、今年度は全体的にやや難化したといえます。