【洛北附中 国語】2021年度の長作文は「歴史上最難関」

2022年03月23日
小学生向け 学校/入試情報

大問一 榎本博明『「さみしさ」の力 孤独と自立の心理学』

(1) 指示語を含む傍線部の内容を説明する問題【やや難】

傍線部のうち「そうした事情」という指示語を説明する問題でした。ただし、「対話」という語を使うことと、文の空欄をうめる形式であること、という二つの指定がありました。傍線部の内容を問う「どういうことか」問題は洛北附中では毎年出題されており、頻出と言えます。「そうした」という指示語から傍線部の前に注目するのは容易ですが、回答のしかたに指定があること・傍線部の後の内容とも照らし合わせて解答を構築する必要があることなど、洛北附中入試の幕開けとなる問題としてはやや難しいと言えます。落ち着いて解くか、場合によってはいったん飛ばすなど、冷静な判断が求められる出題でした。


(2) 本文中のひらがなを漢字に直す問題【易】

本文中のひらがな四つを漢字に直す問題でした。漢字の知識を問う問題は、例年出題されています。いずれも基本的な語句ですので、日ごろから漢字ドリルなどで対策し、確実に正答したい問題です。

(3) 傍線部の語句についての説明として適するものを選択肢から選ぶ問題【やや易】

「青年期」の行動を適切に説明した具体的な選択肢を、四つの中から選ぶ問題でした。本文の内容と照らして正しい選択肢を選ぶ問題は、毎年出題されています。傍線部の直後にある、青年期の行動についての説明から要点を見抜き、選択肢を絞っていくことで正答できる問題です。選択肢もそれほど紛らわしくなく、ぜひ正答してほしい問題です。

(4) 本文中の空欄に当てはまる接続語・語句を選択肢から選ぶ問題【標準】

空欄ACについては接続語を、D.Eについては語句を選ぶ問題でした。接続語問題のような、文脈を理解する力を問う問題は、例年洛北附中で出題されます。ACについては、本文中の空欄に適切な接続語を選ぶ問題でした。日頃から接続語問題にあたっていれば、いずれも前後の関係をとらえるのは難しくないと言えます。ぜひ正答したい問題です。
D.E
については、本文の後半の「自己中心の文化」と「間柄の文化」の対比の理解度が問われています。ここでは空欄前後の「否定的」「肯定的」という語句との関係から選択肢を絞ることができれば、正解することができるでしょう。

(5) 会話文中の空欄に当てはまる内容を選択肢から選ぶ問題【やや易】

「個の確立」が日本人にとって無縁であるという筆者の意見のうち、その理由にあたる内容を選択する問題でした。会話文中の空欄補充問題は、H29年度以降ほぼ毎年出題がみられ、近年の洛北附中の国語では定番となっています。対比を整理できているかどうかを受検生に問うています。欧米の文化にはない日本の文化の特徴を述べている選択肢を探すことができれば、それほど難しくないと言えるでしょう。ぜひ正解にたどり着きたい問題です。

それぞれの文化ではどのような考え方をするのかきちんと整理することで、日本の文化の特徴に当てはまる選択肢を容易に見分けることができます。

(6) 傍線部の内容と反対の意味になる語句を本文から抜き出す問題【標準】

「他者との関係性を生きる」ことと正反対となる生き方を説明した部分を、空欄に当てはまるように本文から抜き出す問題でした。本文からの抜き出し問題は、洛北附中入試でもとくに頻出です。反対の内容を抜き出す出題は例年あまり見られませんが、対比を見抜く力を問う点では例年の傾向通りです。「他者との関係性を生きる」ことの反対の生き方とは、欧米の生き方のことを指すと理解するのは難しくありません。しかし、傍線部の前後に複数紛らわしい記述があるため、15字ちょうどの記述を発見するのに時間がかかった受検生もいたのではないでしょうか。問題自体は標準的なので、全体の時間配分に気を配り、落ち着いて正解したい問題です。

 

大問二 金子修治・鈴木紀之・安田弘法編著「博士の愛したジミな昆虫」

(1) 傍線部の語句を、対比を明らかにしながら説明する問題【やや難】

「不思議な現象」の内容について、なぜ不思議だと言えるのかを、通常の場合との違いを示しつつ説明する問題でした。傍線部の内容を説明する「どういうことか」を問う問題は洛北附中で頻出です。しかし、この問題は指示の難しさと字数の制限により、近年の出題でもとくに回答作成に時間を要する問題と言えます。直前の指示語「この」に注目して、注目する部分を決めるのは容易です。しかし、四十字以内で通常との違いも示しながらまとめるのが難しいポイントでした。書くべき内容を慎重に選び抜きつつ、同時に筋の通ったひとつの文章として解答をまとめる必要があり、受検生に差がついた出題と言えるでしょう。

(2) 本文中の空欄に当てはまる内容を選択肢から選ぶ問題【標準】

本文中の空欄に当てはまる内容を、四つの選択肢から選ぶ問題でした。本文の中に空欄を設け、当てはまる内容を選択肢で問う問題は、洛北附中入試では頻出です。直前の説明が、専門用語の登場などによりやや難しく感じるため、つづく空欄Aに関するこの問題も難しく思われるかもしれません。しかし、Aを含む一文を見るだけである程度候補を絞ることができます。落ち着いて解くことで、ぜひ正解を目指してほしい問題です。

(3) 傍線部中の内容についての問題【やや難】

(3)に分かれています。は本文中の「実験」からわかる結果として正しいものを選ぶ選択問題、は筆者が抱いたある疑問に対する筆者の予想を説明する問題でした。は「実験の結果から分かることを選ぶ」という形式でしたが、このように具体例の内容を抽象化せず、具体的な結果のみを整理させる問題は、今年度初めて見られました。のような本文中の言葉を使った記述説明問題は、例年よく見られる出題です。は、「実験をした結果から分かったこと」という条件に従い、「正しいが、実験の結果から分かることではない」選択肢を外す必要がありました。常識に惑わされず、本文に述べられている自然科学の視点から本当に正しいものだけを選ぶ必要がある問題でした。いかにも洛北附中らしい問題ですが、慣れていない受検生にとってはかなり難易度が高かったと言えます。についても、注目する部分は見抜きやすい一方、字数制限内にまとめるのが難しく、全体として(3)は差がつく問題と言えます。

(4) 会話文中の空欄に本文中から語句を抜き出す問題【やや易】

空欄ア・イ・ウに当てはまる内容を、本文中から探して抜き出す問題でした。大問一でも出題されたように、近年の洛北附中国語では頻出の会話文問題です。空欄の前後にある言葉に注目して、本文のどの部分から探せばいいのか考えることができれば、比較的易しい問題です。会話文中の空欄問題は近年の洛北附中では定番ですので、会話のテーマに沿う内容が文章中のどこに述べられているか、素早く見つけ出せるかがカギになります。

 

大問三 「海の豊かさを守ろう」という言葉から思い浮かべることと、海の豊かさを守るための具体的な行動を述べる長作文【難】

 

SDGsの一つである「海の豊かさを守ろう」という目標から、何を思い浮かべるか、具体的にどのような行動を起こせばよいか、という二点を述べる作文問題でした。今年度は、作文の指示を二つ組み合わせた出題でした。それぞれの指示を単独で見ると、同様の思考を求める出題は洛北附中では定番です。しかしながら、このように二つを組み合わせた形式は今年度初めて見られました。例年と比べて解くのが難しい出題であったと言えます。それぞれの指示は例年と同様であるものの、異なる視点からの内容をつなげて作文するにはどうすればよいか、戸惑う受検生も多くいたことでしょう。今年度の長作文では、自分が述べた内容の一貫性がより重視された出題といえます。作文の一貫性を鍛えるためには、作文を書き、先生にじっくり添削してもらい、書き直すというサイクルを、質・量ともに高水準で訓練することが必要と言えます。洛ゼミでは、作文を「主張・理由・具体例・結論」の四つに分けて書くよう指導していますが、これらの四つの一貫性を守ることを毎回添削でチェックしています。一貫性を意識した作文をどれだけ書いてきたかが、点数の差につながったといえるでしょう。