【京都府高校入試 専門学科 最新入試分析】2023年度 桃山高校 理科

2023年09月30日
中学生向け 受験対策/勉強法

総論

桃山自然科学(50分 100点満点)

小問数は2022年度の20問から殆ど変わらず全21問。大問数は3つで、大問1が小問集合というのも近年の傾向通り。大問2・3ではそれぞれ1テーマについて出題がなされるが、2023年度入試ではその小問のほとんどが計算問題であった。計算問題が多いのは例年通りだが、単純な知識問題や文章記述で回答する問題が一問も無いのはかなり珍しいと言える。

とはいえ全体としての難易度は低く、合格者平均点は7割程度なので、素早く正確に計算を行うことを演習の段階から心がけてもらいたい。

大問別講評

大問1

近年の傾向通り、大問1は小問集合になっている。極端に難しい問題が出ない限り、この大問を素早く正確に解き、一安心して次の大問に進んでもらいたい。(1)(2)は教科書レベルの知識問題なので、全問正解してほしい。(3)は知識だけでの突破はできないが、図を描けば対処可能である。(4)の(a)も一瞬戸惑うが、結果的に(b)で位置エネルギーの話が登場するので、それをヒントに位置エネルギーを軸に考えれば正答を選ぶのは難しくない。大問1だけで小問が10個と全体の半分近くあるので、ここを高い正答率で通過できるかどうかは非常に重要である。

大問2

気体の発生する反応を題材にした化学分野からの出題で、テーマとしては典型的。いわゆる知識問題的な出題は(1)(2)のみで、かつ両方とも基本的な内容なのでここは絶対に得点したいところ。特に化学反応式を答える問題はほぼ毎年出題されており、それも教科書に載っているようなものを答えるというよりかは反応物と生成物が与えられていて元素の数合わせをする、という問題が多い。そのため化学反応式を作れるようにする練習は必須。(3)~(6)も計算問題ではあるものの、難易度としては易しめなので(4)まではしっかりと解けていて欲しい。

大問3

天体分野からの出題だが、必要な知識は火星が地球よりも外側を公転していることくらいで、実質的には図形の相似の問題である。そして計算自体も煩雑ではないが、問題文の読み取りに多くの受験生が苦戦しただろう。また同じような長さを問う問題でも指定されている単位が異なるので注意が必要。

今年の一問

問題

大問1(1)

気体の性質について述べた文として適当でないものを、次のア〜オの中から2つ選び解答欄の記号に◯をつけなさい。

ア 窒素は無臭の気体であるが、窒素原子を含む化合物には刺激臭のあるものがある。

イ 炭などを燃焼させた際の匂いの一部は、二酸化炭素によるものである。

ウ 塩化水素は、独特の刺激臭をもち、黄緑色を示す。

エ 火山ガスなどに含まれる硫化水素は、腐った卵のようなにおいがある。

オ 水素は、水上置換法でも上方置換法でも集めることができる。

 

解答・解説

正解…イ、ウ

 

いずれも教科書レベルの気体だが、その性質を正確に理解している必要がある。ただし多少不安があったとしても実体験と照らし合わせて考えることで自信を持って回答できる。

ア…正しい。大気は無臭なので、窒素も無臭なはずである。一方窒素原子を含むアンモニアは刺激臭を持つ。

イ…誤り。アと同様、大気が無臭なので(構成要素として占める割合は低いが)二酸化炭素も無臭なはずである。もし臭いがあったなら、ドライアイスが食品の保冷剤として使われることもないだろう。

ウ…誤り。本問で最も判断に悩む選択肢だが、塩化水素は超重要物質なので性質の理解は必須。塩酸が無色透明であることからも一応推察は可能である。

エ…正しい。温泉地などでする「硫黄のにおい」の正体は硫化水素のにおいであり、硫黄の単体は実は無臭である、ということをここで是非知っておいてほしい。

オ…正しい。水素は最も軽い気体なので上方置換法で集めることができるが、水に溶けにくい性質を持つので基本的には水上置換法で集める。上方置換法と下方置換法を混同してしまう人が多いが、水置換法と方置換法のビンの向きが同じ、という観点で覚えておくと良い。

ポイント

例えば「火山ガスなどに含まれる、腐った卵のようなにおいがする気体は何か?」と聞かれたら「硫化水素」とすぐに答えられる人が多いだろう。しかしそれだけでは理解とは呼べない。もちろん一問一答的な演習を繰り返すことで定着する知識もあるが、堀川を目指す上ではその逆、「単語を見て人に説明できるか?」という方向に意識を向けてほしい。

また盲目的に物事を暗記していくのには限界がある。そのため解説に記したように、実体験との関連付けをしたり、自分なりの語呂合わせを考えるなど、覚え方にも工夫を凝らすのがおすすめである。

 

まとめ

桃山の自然科学は年によってかなり難易度にしかし焦って長文形式の問題の対策を始めるのは逆効果である。文章を読む速さが上がったとしても、基礎知識がなければいつまで経っても正答率は上がらない。時間がある夏の間に教科書を読み直して、抜けている知識がないかよく確認してほしい。そこで深めた理解を基にすれば秋以降の演習でいくらでも応用問題は解けるようになる。