総論
堀川自然科学(40分 50点満点)
小問数が前年度より若干増加の全26問。大問数は近年の傾向通りで2つで、大問1の方が2に比べてボリュームがあるというのもお馴染みである。文章・図を読み取ることに多少手間はかかるものの、の落ち着いて取り組めば解ける問題(大問1(4)等)を落とさないよう気をつけたい。
難易度としては例年比でやや易〜普通程度だが、全国の公立高校の中ではやはりトップレベルである。堀川自然科学の問題はとにかく文章量が多く、初見のテーマについて実験結果を見ながら解答していくので、普段理科が得意だという人も油断は禁物であり、逆に苦手な人でも文章を正確に理解する力があれば十分太刀打ちができる。
大問別講評
大問1
初見のテーマについて、いくつかの実験手順と結果を見ながら解答していく問題。今年度のテーマは「洗濯物の乾き方」だった。
(2)(11)の記述問題こそ典型的な内容で書きやすいが、選択問題の難易度が全体的にかなり高い。結局のところ選択か記述かというのは形式の違いに過ぎず、どちらにせよ生半可な理解だと不正解になるような問題を出してくるのが堀川である。安易に選択肢に飛びつくのではなく、問題文を吟味→答えを頭の中で出す→選択肢をみて確証を得る→解答という手順をしっかりと踏むべきだ。(3)(9)のような知識問題については、問題集で「基本語句チェック」のような問題を解いて安心するのではなく、可能な限り教科書に立ち返って用語の定義を確認し、他人に語句の説明ができるレベルまで仕上げるのが望ましい。
大問2
会話文を読んで答える問題。本質的には大問1のような形式と変わりはないのだが、問題を解くのに必要のない文が多いので、緩急をつけて素早く読んでほしい。
近年の傾向として大問2に簡単な問題が集まりがちなので、傾向通りであれば先に取り掛かるのがおすすめである。実際(1)〜(8)のどれも基本的な知識と文章中のヒントを組み合わせれば解ける問題で、全問正解が可能である。大問1が難しい分、ここで得点を確保しておきたい。
今年の一問
問題
大問1(3)
気体の性質について述べた文として適当でないものを、次のア〜オの中から2つ選び解答欄の記号に◯をつけなさい。
ア 窒素は無臭の気体であるが、窒素原子を含む化合物には刺激臭のあるものがある。
イ 炭などを燃焼させた際の匂いの一部は、二酸化炭素によるものである。
ウ 塩化水素は、独特の刺激臭をもち、黄緑色を示す。
エ 火山ガスなどに含まれる硫化水素は、腐った卵のようなにおいがある。
オ 水素は、水上置換法でも上方置換法でも集めることができる。
解答・解説
正解…イ、ウ
いずれも教科書レベルの気体だが、その性質を正確に理解している必要がある。ただし多少不安があったとしても実体験と照らし合わせて考えることで自信を持って回答できる。
ア…正しい。大気は無臭なので、窒素も無臭なはずである。一方窒素原子を含むアンモニアは刺激臭を持つ。
イ…誤り。アと同様、大気が無臭なので(構成要素として占める割合は低いが)二酸化炭素も無臭なはずである。もし臭いがあったなら、ドライアイスが食品の保冷剤として使われることもないだろう。
ウ…誤り。本問で最も判断に悩む選択肢だが、塩化水素は超重要物質なので性質の理解は必須。塩酸が無色透明であることからも一応推察は可能である。
エ…正しい。温泉地などでする「硫黄のにおい」の正体は硫化水素のにおいであり、硫黄の単体は実は無臭である、ということをここで是非知っておいてほしい。
オ…正しい。水素は最も軽い気体なので上方置換法で集めることができるが、水に溶けにくい性質を持つので基本的には水上置換法で集める。上方置換法と下方置換法を混同してしまう人が多いが、水上置換法と上方置換法のビンの向きが同じ、という観点で覚えておくと良い。
ポイント
例えば「火山ガスなどに含まれる、腐った卵のようなにおいがする気体は何か?」と聞かれたら「硫化水素」とすぐに答えられる人が多いだろう。しかしそれだけでは理解とは呼べない。もちろん一問一答的な演習を繰り返すことで定着する知識もあるが、堀川を目指す上ではその逆、「単語を見て人に説明できるか?」という方向に意識を向けてほしい。
また盲目的に物事を暗記していくのには限界がある。そのため解説に記したように、実体験との関連付けをしたり、自分なりの語呂合わせを考えるなど、覚え方にも工夫を凝らすのがおすすめである。
まとめ
堀川探究科の自然科学は確かに難しい。しかし焦って長文形式の問題の対策を始めるのは逆効果である。文章を読む速さが上がったとしても、基礎知識がなければいつまで経っても正答率は上がらない。時間がある夏の間に教科書を読み直して、抜けている知識がないかよく確認してほしい。そこで深めた理解を基にすれば秋以降の演習でいくらでも応用問題は解けるようになる。