【京都府高校入試 専門学科 最新入試分析】2023年度 嵯峨野高校 理科

2023年10月02日
中学生向け 受験対策/勉強法

総論

嵯峨野理科(40分 50点満点)

小問数は31問と昨年度とほとんど変化なし。大問が4つで、物理・生物・化学・地学の4分野全てから出題がなされるというのも傾向通りである。専門学科の他の4校(特に堀川・桃山)を見ると物理・化学分野に出題が偏っているので、満遍なく全ての分野から問題が出るのは実は専門学科の中では珍しい。

難易度は高めで、合格者平均点は専修・共修ともに5割前後。全体として分量・図の多さがかなり目立つうえに題材も目新しいものが多いので、条件を整理するのに時間が取られたのだろう。小問だけを見てみると、実は基本的な問題が散見されるので、これらを確実に正解することによって得点を積み重ねたい。

大問別講評

大問1

綱引きをテーマにした物理分野からの出題。図表・長文・初見のテーマといかにも専門学科入試らしい出題になっていて、難易度はやや高め。また(2)(3)では文字で表された各要素の関係式を求める問題が出されているが、このタイプの問題は毎年嵯峨野で見られる。高校内容の理科公式からの出題が多いのだが、これらを知識として知っている必要は全くなく、図表の読み取りや式変形を正確に行えば答えを出すことができる。また、長い会話文に戸惑うかもしれないが、実際には無駄な文が多く紛れ込んでおり、強弱をつけて読めばそこまで時間は取られない。このあたりの感覚は過去問演習を通じて身につけてほしい。

 

大問2

致死遺伝子(高校内容)をテーマにした生物分野からの出題で難易度は高い。大問1と同じく会話文が登場するが、大問1における会話文は図の説明的な役割が大きかったため、まず図を見てからヒント的に会話文を参照するというやり方で時間を節約しながら解くことができた。一方で大問2の会話文は致死遺伝子やチャボ自体の説明をしており、これらを理解しないことには表や小問を見ても意味がわからない。したがって強弱をつけて読むのはもちろん、問題を解くうえで鍵となりそうな語句にはしっかりと印をつけるなど、焦って情報を見落とさないための工夫をしてほしい。

 

大問3

電解質水溶液の電気分解をテーマにした化学分野からの出題。決して簡単ではないのだが、他の大問に比べると親しみのあるテーマであり、図・文量も少ないので得点をとりたいところだ。(6)②の計算は複雑で取りかかりづらいが、(1)~(5)は教科書の知識を使って簡単に解くことができ、(6)①も単位にさえ気をつければ数値を出すのは容易である。

 

大問4

地震全般をテーマにした地学分野からの出題で、難易度は平均的。(1)(4)の知識問題だが、簡単に正誤が判定できない選択肢もあり、自分の知っている知識と矛盾しないかを論理的に考える必要がある。(2)(3)は題材こそ目新しさがあるものの、落ち着いて取り組む時間的余裕があれば解けるだろう。

今年の一問

問題

大問4(1)

地震について正しく説明しているものを、次のア〜エから2つ選び、記号で答えよ。

ア 岩盤が破壊されることにより、自身が最初に発生した場所を震源という。

イ 震源の地表からの深さが100km以上になることがある。

ウ 緊急地震速報は、地震計がS波を観測したときに、P波の到達時間や揺れの大きさを知らせるシステムである。

エ マグニチュードの値は、1カ所の震度の値のみから計算できる。

 

解答・解説

正解…ア、イ

 

ア…正しい。「岩盤が破壊されることにより」の部分に不安を感じるかもしれないが、結果としてウ・エが明らかに間違いなので、消去法で正解とわかる。

イ…正しい。こちらも「100km」以上というのが怪しく感じるかもしれないが、地球の半径が6000km以上あることを考えれば問題はないし、アと同じく消去法で解答できる。

ウ…誤り。P波の方がS波より速いことから考えると、P波とS波が逆だと正しい。

エ…誤り。マグニチュードは地震の規模の大きさを表す値なので、揺れの大きさだけでなく震源の深さや地盤の性質についても考慮に入れなければならない。

ポイント

いわゆる知識問題であっても、一捻り加えられているのが専門学科入試だ。本問の選択肢エが良い例で、マグニチュードの計算の仕方について習うことはないのだが、マグニチュードの定義を正確に理解していれば「1つの震度から計算するのはおかしい」と判断することができる。本問は比較的簡単な方ではあるが、このような一歩踏み込んだ知識問題が出たら、ぱっと見でわからないと焦るのではなく、しっかりと考えを巡らせよう。

 

まとめ

堀川探究科と並んで図表・文量がとても多いので、素早くこれらの情報を処理する練習は必須である。大問2の講評で述べたように、同じ会話文であっても読み方を変えていかなければならないので、過去問演習を重ねる中でその感覚を掴んでいってほしい。ただ読み方を鍛えたところで、初見の内容を問われるという性質上、どうしても試験中に焦りを感じる場面は多々あると思うが、そんなときに頼りになるのが教科書知識の正確な理解だ。自分が確実に知っている内容の問題を解くことができれば、それだけで合格者平均点にかなり近づくことができる。難しい問題揃いだからこそ、その中に紛れている容易な問題は確実に得点できるよう、基礎を積み上げて欲しい。