2024年度西京附中入試速報

2024年02月21日
小学生向け 学校/入試情報

こんにちは!洛ゼミです!

この記事では2024年1月13日土曜日に実施された,京都市立西京高校附属中学校の適性をみる検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの内容について,傾向の変化・簡単な分析結果をご紹介します!

 

適性をみる検査Ⅰ(国語):やや難化

西京附中の検査Ⅰは伝統的に、「超長文の読解」+「200字の作文」という、私立中などとは大きく異なる、独特の形式をとっています。今年度もその形式は変わらず、長文のすばやい読解力に加え、短い字数に説得力を凝縮させる作文力を問う、例年の傾向どおりの検査でした。

 

しかしながら、今年度の難易度は例年よりも高かったと結論づけられます。その理由はずばり、読解問題において記述量が増加していることにあるでしょう。

 

以下、読解パートと作文パートに分けて、それぞれの今年度の特徴を検討します。

 

【読解:質と量の両面から】

年度によっては5000文字を超えることさえある、西京附中の超長文読解。

2022年度以降は「短い文章+長い資料(会話文)」といった出題が見られることもありましたが、今年度は4000~5000字の長文と短い会話文の出題でしたので、問題の構成について、際立った変化はありませんでした。

 

また、読解問題において要求されていた能力は、いわば例年通りの独特さであったと言えます。伝統的に西京附中の検査Ⅰでは、いわゆる”構造的な文章読解”ー「どの段落から回答を探すべきか、接続語やキーワードをもとに仮説を持った読解ーが求められますが、今年度も段落ごとの話題の区切りを見定める構造的読解力が、引き続き必要とされていました。

 

しかし、今年度について特筆すべきは、2023年度に引き続き、読解問題の「記述量の増加」が見られたことでしょう。読解は問1~10の全10問の出題で、それぞれの記述設問を精査すると、その難易度はさほど高くありません。しかし、そのなかで40字記述を4つ、20~30字記述を2つ書くことが求められており、受検生はかつて経験したことのない時間不足を味わったことが推測されます。

 

要約すれば、今年度の読解は「質的には例年通り、量的には難化傾向」であると言えます。"時間があれば解ける問題の大群"を前にして、どこで見切りをつけ、作文に時間を残すか。2023年度以降、読解はとくに、独特な構造的読解を当たり前のものとし、時間配分の感覚を確かなものにするためにも、精選された類題を用いた演習が大切になると言えます。

 

【作文:「例年通り」であるからこそ......】

西京附中の検査Ⅰで最も特徴的なのは、200字作文問題の存在でしょう。

この200字作文は例年、2段落構成と指定され、

・第一段落には文章要約や、設問で指定された特定の論点についての整理(約50字)

・第二段落にはそれに対する自分の意見など(約150字)

を、それぞれ記述することが要求されます。

 

ここ数年は、第一段落で「ポスターの意見の要約」を求める年度(2021年)や「資料として提示された文学作品への言及を含んだ要約」を求める年度(2022年)など、設問の条件に微妙な変化が見られる年もありました。しかし、2024年度は第一段落が特定の論点についての筆者の意見の要約、第二段落はそれに対する自分の意見という形式で、いわば最も伝統的な、過去問・類題演習を経験した受検生がもっとも書きなれた形式であったと言えるでしょう。

 

ただし、受検生に馴染み深い出題であるからこそ、むしろ第二段落の「自分の意見」の組み立てのクオリティで大きく差がつくとも言えます。筆者の意見をなぞるような感想文では、高く評価されることはありません。独自性のある視点から描かれた、説得的で精密な第二段落をいかに書き上げるか。もし50文字余ったとしたら、どんな話題に紙幅を割くべきか。そうした実践的作文力を身につけるために、類題を用いた練習と推敲、専門性のある添削によって、自分の意見の構成パターンを習得することが肝要です。

 

適性をみる検査Ⅱ(算数):難化

まず,最も重要なのは,「今年から【問題1】が小問集合になった」ということです。西京附中の問題,例年難しいものが多く,おそらくその緩和措置として,学校説明会で小問集合を出題するということだと思われたのですが,実際はそうではありませんでした。

【問題1】小問集合がとても難しかったのです!!

特に【問題1】の(3)の問題!

1辺6cmの正方形が複数の正方形で分割されており,その中に図形が埋め込まれているという状況だったのですが,なんと「7×7マス」に分割されていたのです。

詳しくは,問題を見るとわかると思いますが,小さい正方形の1辺の長さが6/7cmだったのです。なんともいやらしい設定ですね。とまどった受検生・1マス1cmで計算してしまった受検生も多かったでしょう。

 

他の問題はおおよそは例年通りと言えるでしょう。内容についても西京附中の対策をしていた受検生であれば,速さ・立体・プログラミング問題など,今まで演習を積み重ねてきた問題ばかりでした。

【問題2】の速さはグラフの縦軸が「京太さんとドローンの間の距離」になっている西京附中によく出てくる設定ですね。対策していた受検生にとっては取り組みやすかったかもしれません。

【問題3】は少し難しかったかもしれません。一つずつ丁寧にさらに工夫しながら数え上げしなければいけないので,作業量が多く,慣れていない受検生にとっては厳しかったかもしれません。

【問題4】は西京附中では頻出の立体の問題です。(1)は易しいので,確実に取りたいですが,それ以降はやはり西京,難しい問題が並んでいます。(2)~(5)の中から2問以上は正解しておきたいですね。ただ,(5)に関しては非常に難易度が高く,適当に答えを書いて次の問題に取り組むのがいいでしょう。

【問題5】はいわゆる「プログラミング」に関する問題です。この問題も例年どうりの出題で,対策をしていた受検生にとっては取り組みやすかったかもしれません。

 

【問題1】の対策については,私立中学の入試問題の小問集合の対策をしていればよいのかというとそうではなく,地道な読解力・地道な計算力・平面図形の理解力・整数に関する応用力など,「裏技テクニック」などではなく,「算数に対する泥臭さ」・「視点を変えて問題を見つめる発想力」が必要であると考えることができます。

 

【問題1】:やや難

【問題2】:例年並み

【問題3】:やや難

【問題4】:やや難

【問題5】:例年並み

 

 

適性をみる検査Ⅲ(理科):易化

理科は【問題2】を除き,例年より易しめの難易度に落ち着きました。洛ゼミが12月29日に実施した,「西京予想」講座とテーマがほとんど同じ問題が【問題2】に出題され,受講していた受検生にとってはなじみのある問題だったのではないかと思います。

【問題1】は西京附中では頻出の「自分で実験ができるかどうか。」・「実験の意図を理解しているかどうか。」を問う問題で,日頃から実験の意味を考えている受検生にとっては取り組みやすかったかもしれません。

また,【問題3】では「チバニアン」について問う問題があり,やはり小3~小6すべての教科書の隅から隅まで目を通しておく必要があると言えるでしょう。

 

【問題1】:やや易

【問題2】:例年並み

【問題3】:やや易

 

 

適性をみる検査Ⅲ(社会):やや難化

西京附中の社会の例年の特徴は、何といってもその「答えにくさ」「解きにくさ」にあります。というのも、求められる知識量は教科書レベルである一方で、知識そのものを短答すればよいのではなく、会話文の穴埋めや資料読解を通した「推論」を通して解答することが求められるのです。したがって、過去問を解き始めた受検生が、それまで社会に自信をもっていたのに、「なぜか得点が取れない」と感じやすい検査になっています。

 

加えて、今年度の受検生はその「答えにくい」という感覚を、例年に比べて強烈に味わった可能性があります。その原因となった出題傾向の変化について、3点に分けて本記事でお伝えします。

 

①問題文中の「資料」の増加

例年、歴史・地理どちらも、知識そのものではなく、その背景にある歴史的経緯や地理的条件を考察させる問題は、まさに西京社会の定番です。その際、《ノート》という論点を整理した文章や、登場人物の会話文の手がかりを読解しながら空欄補充をさせる問題形式など、問題文中に資料が登場すること自体は珍しいことではありません。

しかしながら、今年度はそのような意図で登場する資料の数が、例年に比べて増加していました。また、資料の内容も、表資料やグラフ、地図など多岐にわたり、受検生は文章から数字まで様々な対象から、多くの推論を要求されることとなりました。

そこで必要とされた推論も、非常に難易度の高いものが多く、多くの受検生が戸惑ったことが予想されます。

 

②公民が6年ぶりに復活

西京附中の社会では、公民分野が最後に出題されたのは2018年であり、それ以来5年間は姿を消していました。しかし今年度、市町村の政治についての選択問題が出題されたので、過去問では演習量を確保できない分野であることも踏まえれば、難しく感じる受検生もいたことでしょう。

 

③歴史分野の減少

今年度の歴史分野からの出題は、たったの2問に留まりました。社会分野全体では細かく分けると20問程度の出題数でしたので、今年度の歴史分野の出題割合の小ささは異様であったといえます。

 

以上のように、今年度の出題の特徴と、難易度の高さの原因を分析しました。

西京附中の社会では、定番知識をそのまま問うような出題よりも、資料等を用いた推論形式の問題が中心になることは、今後も大きく変わらないと予想されます。したがって、その対策として、地理的・歴史的知識をその理由や背景とセットで把握しておき、独特な形式の問題でそれをアウトプットする学習は、引き続き重要となります。

加えて、今年度の傾向を踏まえると、「答えにくい」独特の形式への対策においては、未知の資料を含む問題を用いた演習が、今まで以上に要求されることとなりそうです。