2024年度洛北附中入試速報

2024年03月06日
小学生向け 学校/入試情報

こんにちは!洛ゼミです!

この記事では2024年1月13日に実施された,京都府立洛北高校附属中学校の適性をみる検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの内容について,傾向の変化・簡単な分析結果をご紹介します!

 

適性をみる検査Ⅰ(国語):やや易化

 

洛北附中の検査Ⅰは例年、

大問1・2:読解問題

大問3:360〜450字の長作文

という構成で出題されています。

 

読解問題には、洛北附中独特の出題が数問あるものの、比較的オーソドックスで対策のしやすい問題が並ぶ傾向にあります。一方で、最後に待ち構える400字作文は、その字数の長さと求められる完成度の高さから、検査Ⅰの最大の難所と言えるでしょう。

 

それでは以下、今年度の検査Ⅰの特徴について、読解と作文をそれぞれ検討していきます。

 

【読解:まるで理科⁉︎ ずっと変わらない"洛北らしさ"】

 

まずは、洛北附中の検査Ⅰは例年、出題される問題文のセレクトに特徴があります。

2つの大問では伝統的に、「ひとつは自然科学、もうひとつは人文社会科学」というセットで出題されます。前者はたとえば、マンボウの海中の移動と体温の関係を調べる研究についての文章(2022年)、後者は青年期の自意識と日本文化についての文章(2021年)などがわかりやすい例でしょう。

 

今年度については、大問1は定番の自然科学(モズの習性についての研究)、大問2は社会課題(アボカドを例とした食糧生産の世界的課題)を扱う文章が出題されました。

大問1の自然科学の文章は例年通り、実際の研究が専門用語を交えて解説されます。ここでは、筆者がどのような仮説をもとに、どのような方法で実験を行い、どのような結果となったのか、順を追って説明されることとなります。まるで理科のようですが、紹介されている研究や実験の手法や新奇性についての情報を理解しないと解けない選択問題が出題されるのも、実はいたって例年通りの、洛北らしさの継続と言えます。

ただ、このような出題のポイントは、洛ゼミが実施する模試型実践演習「プラクティス」での類題や、テーマ別特訓で扱っているものであり、対策していた受検生にとって、難易度はさほど高くなかったでしょう。

 

大問2の文章も、文章の構成が非常にわかりやすく、簡単に読み解ける文章でした。一部に指示がやや複雑な記述問題もありましたが、そのような問題は毎年数問出題されていることから、難易度は例年通りであると言えます。

 

全体として、問題数が多くなく、記述量も少ない出題でした。洛北らしい自然科学の出題の切り口や、そこで問われる能力も例年並みで、今年度の読解は「やや易化」と結論づけられるでしょう。

 

【作文:近年の出題の変容をふまえて】

 

400字という長い字数を、冗長ではない、論理的に計算された文章で書き埋めることが求められる洛北附中の作文は、まさに難所です。

今年は、問題文で提示された「課題解決型のフレームワーク」に則って学習する上で、どのようなことが大切かについて作文する問題でした。これは、洛北附中の作文の出題の歴史からみて、その難易度や特徴はどのように位置付けられるでしょうか。

 

以前は「"常識"について」(2013)や「"学ぶということ"」(2014)について書くなど、テーマとなる言葉だけが与えられる、非常に自由度の高い論題が中心に出題されていました。受検生はそれらに対して、各自の体験を交え、いわば自由闊達に筆を振るうことも可能なものでした。

しかし近年では、2021年の「”海の豊かさを守ろう”というSDGsの目標から連想することと、そのための具体的な行動」、2022年の「変化の激しい社会を生き抜くための、専門的アな学びと総合的な学びについて」、2023年の「ロボット三原則にひとつ原則を追加するなら」といったように、受検生にゼロから意見を構築させるのではなく、問題文に意見の枠組みや場面設定が用意されています。むしろ、与えられた意見や場面の趣旨を正しく読み解き、そこから外れない形で書く能力も求められつつあります。

 

こうした変容を踏まえると、今年度も近年の傾向と同一の出題であったと見ることが出来そうです。ただ、問題文が提示する枠組み(課題解決型の学習)の趣旨を理解することは決して難しくなく、例年並みで書きやすいテーマだったと言えます。

したがって、長作文の400文字を無駄なく仕上げるために、

・与えられた「課題解決型学習」の趣旨を正しく理解し、

・自分なりの論点を設定して独自性をもった主張を展開し、

・それに対する客観的な理由を述べ、

・一読するだけでそれらを論理的に導くことができる具体例をまじえ、

......など、長い文字数を効果的に使う構成・表現力と推敲が、例年と変わらず重要となる出題でした。

 

適性をみる検査Ⅱ(理科):例年並み

 洛北附中・西京附中どちらの中学校でも近年頻出となってきているのが、「実験手法」に関する問題です。洛北附中では、2023年度、2022年度ともにグラフを書く問題が出題され、今年はグラフを書く問題は出題されなかったものの、「実験計画」に関する問題が出題されました。

 具体的には、「標本調査の原理」・「メスシリンダーの使い方」を問うような問題が出題され、これから「実験手法」を問う問題はトレンドになってくると思われます。

 そもそも洛北附中はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に認定されており、中学校に入学してからも、理科の実験を自らやる機会があるでしょう。そういったときに、自分で実験計画を立て、自分で実験結果を解析し、その実験結果をもとに、実験をブラッシュアップして、もう一度実験をするといったことが求められます。いわば「実験力」というものが備わっているかどうかを見るための問題が出題されているのでしょう。

 

 他の問題は概ね例年通りの出題と言えるでしょう。例年に比べ、少し難易度の高い問題もありますが、しっかりと対策をしていた受検生にとっては比較的取り組みやすい問題が多かったのではないでしょうか。また、12月末に洛ゼミが実施した、洛北予想講座実践編の問題と内容がほとんど同じ問題もあり、この講座を受講し、復習をしていた受検生には有利に働いたかもしれません。

 

適性をみる検査Ⅱ(社会):例年並み

 

洛北附中の社会では例年、①基礎的な教科書知識と、②高い資料読解能力(時として計算を含んだ情報処理力)が求められます。

結論を先取りすれば、今年度もその傾向に大きな変化は見られず、難易度も例年並みと言える出題セットでした。

 

それでは、以下は①基礎的な教科書知識を求める問題、②資料読解・情報処理能力を求める問題のそれぞれについて、今年度の特徴を確認していきましょう。

 

①基礎的な教科書知識:トレンドは「都道府県」から「世界地理」へ?

洛北附中の社会が問う知識のレベルは、すべて教科書に載っているものであり、また出題される分野(工業・漁業や○○時代など)に目立った偏りもありません。

ただし、出題される知識に偏りはなくとも、出題の切り口(角度)には特徴があります。というのも、洛北附中では伝統的に、地理・歴史で学習する内容を「都道府県ごとに整理する」切り口からの出題が多くみられるのです。(例えば、都道府県ごとの漁獲量・面積・文化遺産数などがまとめられた表から、特定の都道府県を選ぶ問題などがイメージしやすいでしょう。)

しかし、ここ数年の出題を見ると、都道府県という切り口に加え、世界地理の観点からの問題も増加傾向にあります。今年度は、日本がオレンジの輸入相手国としてアメリカとオーストラリアの両方に頼っていることの理由(北半球・南半球が関係していますね)を書く問題や、世界の州(アジア・ヨーロッパなど)にまつわる知識問題が出題されています。

とはいえ、問われる知識は教科書範囲の基本的なもの。「世界地理に苦手をつくらない」ことは、より重要になるかもしれません。

 

②資料読解・情報処理能力を求める問題:例年通りの傾向と難易度

 

洛北附中の社会で「差がつく」のは、このような思考力問題です。このような問題で目にする資料は、どれも学習したことのない未知の資料で、その多くはたくさんの数字やその算出の定義が並んでいるものとなります。

例えば、今年度は横須賀市・舞鶴市・呉市・佐世保市の4都市について、面積や人口、流入・流出人口や昼夜間人口比率のデータが提示され、問題文にしたがってそれらを素早く計算・処理することが求められました。(なお、昼夜間人口比率などの処理を求める問題は、「洛北予想講座」をはじめとした多くの洛ゼミ特別講座で扱っているものであり、その処理に慣れていた受検生は解きやすい問題だったと推察されます。)

 

このような資料問題は、教科書外の知識をむやみに詰め込むことではもちろん対応できません。むしろ、知識ではなく「着眼点」などの情報処理の工夫によって解くことができる問題です。このような問題の類題は、全国の公立中高一貫校の入試問題にもいくつか存在しており、対策にはその中から精選された類題を通した実践演習が有効なものとなります。

 

以上のように、①知識問題と②思考力問題のそれぞれについて、今年度の分析を概観しました。

 

適性をみる検査Ⅲ(算数):例年並み

 多くの受検生を苦しめたであろう最も大きな変化は「問題文の量が爆増したこと」です。例年、大問4つのうち高々2つの大問の文章が長い程度で収まっていましたが、今年の洛北附中の算数の問題は4つの大問すべてで日本語を読み取る読解力が求められました。国語が苦手で算数を得点源にしていた受検生は、膨大な文章量に面食らってしまったかもしれません。

 一方で、文章を読み取ることができれば、内容自体は難しくはなく、どの問題も、比較的簡単に解くことができたと思います。

 

 大問1について、おそらく今年の4問の中で最も難しかったのが大問1でしょう。小学生にとって慣れ親しんでいない「比重」・「密度」といった概念が導入され、さらにそれをもとに物理現象を読み解く必要がありました。「密度」といった概念に一度でも触れていると有利に勝負できたかもしれません。

 大問2について、この大問は「速さとグラフ」に関する問題でした。西京附中の算数の問題では頻出分野ですが、洛北附中では、あまり見られなかったので、戸惑った受検生もいるのではないでしょうか。しかし、西京附中が出題している問題ほど難しくはなく、比較的内容は簡単な問題が多かったので、この問題が差がつく問題になったかもしれません。

 

 総合的にみると、例年並みに落ち着きますが、「比重」・「密度」といった「中学校で習う、小学生にも比較的簡単に理解できる内容」や「西京附中で頻出の内容」が出題されていることが分かります。勉強時間に余裕がある人は,洛北志望であっても西京附中の問題を見てみてもいいかもしれません。

 

大問1:やや難

大問2:例年並み

大問3:例年並み

大問4:例年並み