京大理学部数理科学系とは?中の人が内側を丸裸に

2024年05月12日
高校生向け 学校/入試情報

受験生,京大生の皆さん,こんにちは!

この記事では,京都大学理学部数理科学系がどんなところなのか解説していくよ!

 

京都大学の理学部を志望校にしている君!

京大理学部で数理科学系に行こうか迷っている君!

 

必見です。

今回紹介するのは主に3つ

 

①数理科学系の雰囲気は?

②数理科学系の進路は?

③数理科学系はどんな授業があるの?(京大理学部の1,2回生向け)

 

①数理科学系の雰囲気は?

かなり特異な雰囲気なのは間違いありません。半分くらいの学生は人間として持っているはずの感情を持っていません。(いい意味で。)その代わりと言ってはなんですが,数学に対し,真摯に向き合っている人が大量にいます。(数学を優先するがあまり,対人関係がおろそかになっているのでしょう。)

しかし,そうでない人がいるのもまた事実です。フレンドリーに接してくるし,イケメンで親切心もあるのに,数学がめちゃめちゃできる神みたいな人もいます。(ごくわずかですが。)

また,周りの人と比べて,自己肯定感が低くなる人も多いですね。何事についてもそうだとは思いますが,特に数理科学系に進学するときは,「周りと比べず,自分のやりたい数学をやる。」ことを大切にしましょう。

 

②数理科学系の進路は?

「就職無理学部」と言われている理学部ですが,その中でも数学系は特に就職に向いていない系だと思います。「就職ができないなら研究職につけばいいじゃない。」と数学界のマリーアントワネットは言ってきますが,そうはいかないのもまた事実。

おもな進路は

①大学院進学

②IT・生命保険・金融関係

の2つのようです。特に半分以上の学生は大学院進学をします。(中には研究者志望の人とモラトリアムを継続している人がいるのには注意が必要です。)

 

③数理科学系にはどんな授業があるの?

数理科学系の授業はすべて,「何回生向けに開講されているか?」という情報があります。これを参考に見ていきましょう。(情報は最新のものです。)

1回生配当

1.線形代数学A・B(講義・演義)(A:前期、B:後期)

高校のときにやったベクトルをさらに深く考えていきます。「線形性」という概念を振りかざしていきます。

講義の授業と演義の授業に分かれており,文字通り

講義の授業は先生がひたすらに黒板に板書してくれるので,それを聞き取って理解する授業

演義の授業は先生が演習問題を用意してくれるので,それをひたすらに解いて理解する授業

になっています。

線形代数学Aのゴールは「連立1次方程式とCramerの公式」

線形代数学Bのゴールは「行列の対角化」

とされていることが多いと思います。

 

2.微分積分学A・B(講義・演義)(A:前期、B:後期)

高校の時にやった微分積分をさらに深く考えていきます。「実数」をきちんと定義し、「ε-N論法」,「ε-δ論法」といったやや抽象的な概念も出てきますが,基本的には高校でやった内容の延長です。

講義の授業と演義の授業に分かれており,文字通り

講義の授業は先生がひたすらに黒板に板書してくれるので,それを聞き取って理解する授業

演義の授業は先生が演習問題を用意してくれるので,それをひたすらに解いて理解する授業

になっています。

微分積分学Aのゴールは「極限と1変数関数の微分法と積分法」

微分積分学Bのゴールは「級数と多変数関数の微分法と積分法」

とされていることが多いと思います。

 

3.現代数学の基礎A・B(A:前期,B:後期)

この授業は前2つとは少し毛色が違い,数学の基礎となるところをかなり浅くかなり素早く学習していきます。主な学習内容は

現代数学の基礎A・・・集合と写像,論理記号,極限,実数の性質,一様収束,一様連続,同値関係とwell-defined,Landauの記号,対称群

現代数学の基礎B・・・関数列と関数項級数,Euclid空間の位相,ベクトル空間,ノルム空間,内積空間,Banach空間,行列ノルム,行列関数,行列と常微分方程式

とされていることが多いと思います。

 

2回生配当

1.線形代数学続論

ほとんど,線形代数学Bと授業内容が変わりませんが,プラスで学ぶこととして,

ベクトル空間の商空間,Jordan細胞とJordan標準形,行列と常微分方程式,双対空間,二次形式

などがあります。

 

2.微分積分学続論I-ベクトル解析

ベクトルから数への関数,数からベクトルへの関数,ベクトルからベクトルへの関数を微分,積分していきます。最終目標はGaußの発散定理としている授業が多いと思います。

 

3.微分積分学続論Ⅱ-微分方程式

色々な常微分方程式の初等的な解法や,常微分方程式の解の存在について少しだけ扱います。解の挙動について扱う授業もあるみたいです。

 

4.確率論基礎

名前の通り,確率論の基礎の部分を学習します。なるべくLebesgue積分を用いずに確率論を展開します。m次モーメントや確率分布,確率密度関数,大数の弱法則と大数の強法則などについて学習します。

 

5.関数論

複素数から複素数への関数,複素関数の初歩を扱います。実数値関数のときには見られなかった性質がたくさん出てきて非常に面白いです。最終目標は留数定理やRouchéの定理としている授業が多いと思います。

 

6.集合と位相(集合と位相演習)

前半は集合論,後半は位相空間論を学びます。大学の幾何学の雰囲気をつかみつつ,現代数学の根本となる「位相」の概念を学びます。「Hausdorff性」,「コンパクト性」,「連結性」などの位相的性質は非常に重要な概念であり,授業の最後の方では,これらの性質をどんどん詳しく見ていきます。

「コンパクト空間からHausdorff空間への連続全単射は同相写像である。」など。

 

7.代数学入門(代数学入門演習)

群,環,加群の基本的な内容を学習します。一題テーマとしては,「群の準同型定理」,「単因子論」,「Sylowの定理」などが挙げられるかもしれません。特にSylowの定理は有限群の分類に大活躍する重要な定理です。

 

8.幾何学入門(幾何学入門演習)

基本群や基本亜群,Van Kampenの定理,被覆空間や普遍被覆写像,Euclid空間に埋め込まれた多様体,Sardの定理,3次元空間内の曲面とGauuß曲率などについて扱います。非常に内容が膨大で,単位を落とす人が多い授業としても有名です。しかし,Euclid空間に埋め込まれた多様体などは,3回配当の幾何学Ⅰなどへの架け橋になるもので,非常に重要なテーマです。

 

9.解析学入門演習

微分積分学A・B,微分積分学続論I・Ⅱ・関数論で学習したことを演習します。ひたすらに演習問題を解くだけで,毎週テストがあるような感じです。

 

10.非線型解析入門

常微分方程式の解の挙動や流れ,Euler-Lagrange方程式について扱います。物理学の分野に解析力学の分野がありますが,そこで大活躍するEuler-Lagrange方程式を数学的に厳密に整備しておこうというモチベーションが少なからずあると思います。

 

3回生配当

1.複素函数論

2回生で学んだ関数論の延長です。Riemann球面やMontelの定理と正規族,Riemannの写像定理,調和関数,劣調和関数,Perronの方法,Weierstrassの定理とMittag-Lefflerの定理,解析接続と一価性定理,層,Riemann面,楕円函数,Weierstrassの℘関数などを学びます。

 

2.微分方程式論

解の一意性はもちろんのこと,級数による解法,Green関数やSturm-Liouville固有値問題について学びます。工学系のただ解を求めるだけの微分方程式の勉強とは違い,微分方程式の理論的な側面について詳しく学習します。

 

3.函数解析学

Banach空間,Hilbert空間の定義から始めて,函数解析の3大定理「一様有界性原理」,「開写像定理」,「閉グラフ定理」をゴールに理論を進めていきます。単なる線形写像がノルム空間,Banach空間,Hilbert空間上で定まったときに,あらゆる方面で応用されていくことになります。

 

4.非線型解析

Hopf分岐などの上微分方程式の理論や変分法の数学的な整備を学習します。絶対連続関数,有界変動関数から始めて,Toneliの定理やMoreauの定理などを扱います。

 

5.代数学Ⅰ・Ⅱ

一言で言うと,

代数学Ⅰは可換環論

代数学Ⅱは有限次元のGalois理論

です。代数学Ⅰでは,Hilbertの基底定理やテンソル積,局所環,完全列,入射加群と射影加群,Krull次元などについて学習します。代数学Ⅱでは,体論の基本的なところから,Golois理論,トレースとノルム,Hilbertの定理90,Kummer拡大,円分体などについて学習します。

 

6.幾何学Ⅰ・Ⅱ

一言で言うと

幾何学Ⅰは多様体と微分形式

幾何学Ⅱはホモロジーとコホモロジー

です。幾何学Ⅰでは,幾何学入門で定義したEuclid空間に埋め込まれた多様体をもっと一般化して,多様体の定義を与え,それについて考えていきます。はめ込みや埋め込み,Sardの定理,1の分割,微分形式について学習します。幾何学Ⅱでは,代数的トポロジーからMayer-Vietoris完全列やde Rhamコホモロジー,Kunnethの定理と普遍係数定理につて学習します。

 

7.解析学Ⅰ・Ⅱ

一言で言うと

解析学ⅠはLebesgue積分

解析学ⅡはRadon-Nikodýmの定理と超関数論

です。解析学Ⅰでは,簡単な測度論から始めて,Lebesgue積分を定義,Lebesgueの収束定理によって,極限と積分を簡単に入れ替えられるようになります。解析学Ⅱでは,全変動,絶対連続や特異といった概念とRadon-Nikodýmの定理,函数空間,Shuwartz超関数,急減少関数,緩増加超関数,Fourier変換,Fourier級数について学習します。

 

8.代数学演義・解析学演義・幾何学演義

すべて演習の授業です。問題が配られるので,それを解いて,黒板で発表します。教授とたくさんの学生の前で自分が解いてきた問題を発表するのは中々に緊張します。また,配られる問題は簡単なものもありますが,かなり難しい問題もあり,授業外で数学を考える時間がかなり必要になります。

 

4回生配当

4回生配当の科目は興味によって取らない科目も増えてくるので,科目の紹介だけします。

代数学・・・代数幾何学,整数論

幾何学・・・位相幾何学,微分幾何学

解析学・・・確率論,函数解析続論,偏微分方程式

そのほかにも代数学特論,幾何学特論,解析学特論,数理科学特論,計算機科学特論などがあります。