国語
総論
例年の問題の傾向
堀川高校探求科の国語試験は、現代文、古文の二つの大問で構成されます。大問一に相当する現代文では随筆が出題される傾向にあります。文章、記述量は共に多く、選択問題の選択肢の文量が多いことから、解答に時間がかかります。大問ニにある古文は現代文と比較すると、難易度は低い傾向にあります。また、文量は非常に短いことから、内容も把握しやすいです。しかし、内容の理由・論理関係を問う記述問題が多く、ただ概観を掴むだけではなく、「なぜこう言えるのか?」という視点を常に持ち続ける必要があります。
今年の問題の特徴
国語入試の形式は、例年と同じく随筆・古文の構成でした。大問一の現代文の内容は人と自然の関わり方について述べ、そしてその関係性における言葉の役割についての随筆でした。記述は難しいですが、漢字変換、空欄挿入など、基礎的な知識を測る設問はいくつか存在し、それらをきちんと取る必要があります。会話文問題は一見難しそうですが、「書き抜き」であるため、実際の難易度は低めです。会話文は抽象的な傍線部の解説を担っているので、課題文における傍線部の解釈を知る手掛かりになります。
大問ニの古典の内容は、侍を雷と誤解された出来事について記述された文章でした。大問2の記述問題では、ただ本文の要素を切り貼りするのではなく、その要素間の論理展開までも補い説明する必要がありました。
今年の一問 大問一問6
問題
次の会話は、生徒Aと生徒Bが、傍線部③「『超自然』という言葉を認めない」について話し合ったものである。会話の中の空欄[a]~[d]にあてはまる語句として最も適当なものを本文から書き抜きなさい。ただし、同じ記号の空欄には同じ語句が入るものとする。
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生徒A:筆者は、『感応の呪文』の著者が超自然という言葉を認めないことをおもしろいと言っているんだけど、どういうことかな。
生徒B:筆者は、一般的には[a]不思議な力を扱うのが[b]のはずなのに、それを論じている『感応の呪文』の著者が、そうしたものの存在を認めないところに面白さを感じているんだよね。
生徒A:どうしてこの本の著者は、「超自然」を認めないのかな。[b]って「超自然」に関わるのが普通だと思うのだけど。
生徒B:そのことを説明するのに、筆者は、自然界のすべてが[c]によって造られたというキリスト教的な世界観を紹介しているね。
生徒A:そうだね。筆者は[d]自然と[a]「超自然」を分けて考えるのはキリスト教の見方にしばられているからだと書いているんだけど、どういうことかな。
生徒B:筆者は、キリスト教では[c]が[d]自然の全てを造り、その背後に[a][超自然]があると考えたようだね。
生徒A:なるほど。「超自然」っていうものがあるという考え自体がキリスト教的な世界観に基づくんだね。[b]を論じたこの本の著者は、そうしたキリスト教の見かたをしていなかったから、「超自然」を「自然」と分けて考えなかったということになるんだね。
生徒B:そうだね。おもしろいっていう筆者の感想には、『感応の呪文』の著者が、キリスト教的な世界観を持っていなかったという前提が隠されていたということになるんだね。
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解説
「『超自然』という言葉を認めない」著者の考え方は、「そうしたキリスト教の見かたをしていなかったから、「超自然」を「自然」と分けて考えなかったということ」と同じであることが分かります。このように、会話文問題では、空欄を埋めずとも課題文の内容を説明してくれていることが多いです。このように、会話文問題は「難しい問題」ではなく「課題文を分かりやすく解説している文章」と捉え、課題文への解像度を高めていくと良いでしょう。
まとめ
入試本番の話をすると、文章の内容が簡単であることから、古文から解きすすめることをお勧めします。実際に過去問演習でどちらがよいか検討を行ってみてください。現時点で過去問演習に向けてできることは、随筆的文章・評論文をしっかり解く事です。随筆問題が解きづらい理由は、共感・理解が難しいことにあります。そのため、問題を解いた後、解説の解答の根拠や、文章全体の内容を、自身が理解できたか確認してみてください。
英語
総論
例年の問題の傾向
堀川高校探究科の英語の試験は公立高校の中では最難関であり、特に読解力に関しては非常に高いレベルが求められている。大問構成としては、リスニング問題1題、長文問題2題、英作文問題1題であり、長文問題は説明文読解1題と小説文読解1題に分かれている。堀川英語の最大の特徴は、長文問題の難しさである。説明文は抽象的な事柄をテーマにしていることが多く、設問も単純に解くのが難しいものが多い。また、小説文は文章が長く、設問の数も多い。このように、長文問題は非常に難しいのだが、一方で英作文問題はそれほど難易度が高くなく、基本的な英語を表現できるかを調べるものとなっている。
今年の問題の特徴
今年も例年通りリスニング1題、長文2題、英作文1題の構成となった。大問2に関しては、昨年のように図と独立の問題文を伴うような問題は出題されず、オーソドックスな読解問題の並びとなった。大問3に関しては昨年と大きく違い、問題文がブログの抜粋という形式になっており、慣れていないと読んだり、必要な情報を検索するのに少々戸惑ってしまうかもしれない。大問4では、2つの空所に当てはまる内容を考えるという点では昨年通りだったが、今年は小問2つの構成となっており、それぞれ空所の内容も、その前後の文を読んだだけでは分からなくなっているので、昨年よりは難しくなったと言える。
大問別分析
<リスニング>
省略
<筆記試験>
大問2 【難易度:標準】
文章の内容は、完璧主義の弊害と、失敗や間違いとの付き合い方について焦点を当てており、一見すると抽象度が高く、読むのに苦労するように思えるが、随所で具体例が使用されているため落ち着いて読み進めていけば内容を理解するのにそこまでの苦労はないと思われる。また単語の注釈も手厚くなっているものの、逐一これをチェックしていると時間が掛かりすぎてしまうので、単語の学習も怠らないことが重要である。
以下に各設問の内容を示す。
問1 空所に当てはまる英文を答える問題
問2 本文の内容を踏まえて下線部の理由を示す日本語の文を完成させる問題
問3 本文中の空欄に当てはまる適切な選択肢を選ぶ問題
問4 本文中の空欄に適切な語句を補充する問題
問5 本文中の3つの空欄に当てはまる語句を答える問題
問6 本文中の空欄に当てはまる英文を選択肢から答える問題
問7 本文中の内容を踏まえて適切な英文を2つ選ぶ問題
問題の系統は昨年とほぼ変化はなかったが、昨年と比べると身近な話題で読みやすくなっていたと思われる。また各問題も傍線部の前後を読めば答えられるような問題であったから、分からない単語や文に時間をかけすぎるのではなく、設問に関係のある部分や、段落全体として何を言おうとしているのかということに焦点を絞って効率よく読み進めていくことが必要である。
大問3【難易度:やや難】
今年はブログの抜粋という形式の長文で、最近では大学入学共通テストや各英語資格試験でも見られるような形式ではあるが、一度目にしたことがないと少し読むのに戸惑ってしまうかもしれない。しかし各英文は使われている単語や文法もそれほど難しいものはなく、長文の量を考え、時間をかけすぎないように読み進めていければ十分に得点ができる箇所である。普段から長文を読み進めると同時に情報を整理していく練習を積むことが必要である、場合によっては切りの良いところでメモをとりながら読み進めていくことも、理解を助けてくれるかもしれない。
以下に各設問の内容を示す
問1 本文中の空欄に入る適切な単語を答える問題
問2 本文中の下線部に適合する英文を選択する問題
問3 本文中の下線部に適合する英文を選択する問題
問4 本文中の空欄に当てはまる適切な英文を選択する問題
問5 本文中の空欄に当てはまるタイトルを答える問題
問6 語句を意味の通るように並べ替える問題
問7 5つの英文を並び替える問題
問8 ブログのコメント主の主張に合うように空欄に当てはまる英文を選ぶ問題
問9 本文中の出来事の時系列を問う問題
問10 本文の内容にあう英文を選ぶ問題
今年は昨年と変わって、単語の並び替え問題や英文の順番を本文の流れにそうように並び替える問題が新しく出題された。このような問題は他の専門学科にもみられるような問題形式であるので、対策が必要である。正確な文法の知識や代名詞、時制、接続詞の理解などが必須となる。それ以外の問題に関しては該当箇所は比較的見つけやすく、そのまま答えればいいような問題が多いので、やはり長文の全体的な理解、つまり大きな話の流れを理解しながら読み進めていくことが求められる。
大問4 英作文【標準】
例年通りの2つの空所に当てはまる英文を答える問題で、今年は昨年と違い小問2つの構成となった。最初の小問では"vice versa"の理解を問う問題で、この表現を知っている人にとっては簡単だったかもしれないが、本文中のヒントだけでは答えにたどり着くのは相当難しかったと思われる。小問2に関しては本文全体の理解が必要で、各具体例から抽象して、空所に当てはまる英文を答える必要があるので、例年と比べると少し考えを巡らせる必要が大きかったと考えられる。これまで堀川高校の英作文は比較的得点のしやすい分野であったが、今年の傾向を踏まえると、今後単純な英文を書く能力だけでなく、その前提となる英文に対する深い理解が問われるような問題が出題されていく可能性があるので、対策が必要となる。
分野別分析・対策
堀川高校探究科の英語の入試は非常に難易度が高い。だからこそ2つの力が必要になる。
1つ目の力は、「ミスのない英文を書く力」である。堀川英語の大問4は大問2、3の長文問題に比べると、難易度は高くない。ここで得点を落とさないことが非常に重要である。難しい表現は求められていないので、ミスのない英文を正確に書くことを日頃から意識して練習することが大切である。 また各長文問題でも本文中に当てはまる英文を自分で考えて書くことが求められるような問題もよく出題されるため、いかに自分の伝えたいことを単純化して、慣れ親しんだ英文の型に当てはめられるかが問題を解くうえで重要となってくる。
2つ目の力は、「必要な情報を本文から素早く見つける力」である。大問2、3の長文問題は文章が長く、単語も難しいため、どうしても読むのに時間がかかってしまう。そのため、各設問にあまり時間をかけることができない。したがって、設問で問われている情報を本文中から素早く見つける力が必要になる。問題を解いていく中で、どの部分を探せばよいのか、どの部分に解答につながるヒントが書いてあることが多いのかというのを意識していくことが大切である。 また分からない単語や文にあまり時間をかけすぎないことも重要で、試験ではいかに本文の内容を細かく理解しているかが評価されるのではなく、いかに多くの問題を正解するかが評価されることになる。すると、問題を解くうえでの最低限の英文の理解さえあればそれでよく、完璧な理解は必要とされていないという意識を持ち、効率よく問題を処理していくことが長文攻略のポイントとなる。これについては一朝一夕で身につくものではなく、英語長文がどういう形式で書かれていることが多いかということについての理解も必要であるが、それについてはリングの主要講座の中で逐一解説していく。
今年度至極の一題
3 問6 次の英文が本文中の下線部⑥が表す内容の説明となるように、下の語句を並べ替えて英文を完成させてなさい。 They ( are / because / have / no place to go / of them / sent to / too many) Africa. |
語句の並べ替えで重要なのは「文の骨格をつかむこと」「かたまりを作ること」である。今回重要なのは後者であり、意味が通るようにかたまりを作ればそれほど難しくない。たとえば、of them に注目すると、その前に来そうなものがtoo many しかないので、too many of themというかたまりを作ることができる。また、because があることから主語が2つ、動詞が2つ必要となり、主語は先頭のThey、too many of them になり、動詞については最後尾のAfricaに注目し、前半の文にhave 、後半の文に are sent to をもってくればいいと分かる。あとはhaveの後ろに適切な目的語を補えば正解にたどり着ける。
They have no place to go because too many of them are sent to Africa.
という答えを作ることができる。
数学
総論
試験時間50分,大問数6,小問数18であり,例年と同じような問題量であった。内容として昨年ほとんど出題されなかった立体図形が多く出題され,近年まれに見る回転体の問題もあった。昨年度はどれもあまり類を見ない問題であり,手もつけられないというものもあったが、今年度の全体の難易度は標準からやや難といったところで,解けたら差が付くという問題が多く、どれも丁寧に図を描いたり計算を進めていく必要があったので時間との勝負となった。
大問別分析
1 小問集合
昨年と同じ6問の構成であった。内容としては毎年出題されている文字式の計算や図形問題,関数と図形の融合問題のほか,近年出題されていなかった食塩水の問題や場合の数の応用問題などが出題された。(4)(6)はやりやすい問題であったが,それ以外はあまり類を見ない問題であり,時間がかかったと思われる。
(2)はあまり見ない式の形であるが,を代入すればよいと気付くと簡単であった。(5)は全ての場合を書き下しても求められるが,0点があることに注目すると7を作るのに3と5を何回足し合わせても作れないことがわかる。他の場合も直接求めた方が速く解ける。
小問数が多く,配点が高いと想定される大問である以上,時間を少々かけてもよいので4問以上の問題を解ききりたい。思考を要する問題は少なく,丁寧に時間をかければ解ける問題が多かったので,落ち着いて大問1に取り掛かってほしい。
2 立体図形
動点を含む立体図形の問題。設定自体はよくある動点の問題であり,解き方はそこまで悩まなかっただろう。立式の仕方も特に難しいものではない。ただ,(2)を解くためには点P,Qがある辺が変わるごとに式が変わることに注意する必要があり,各場合でしっかり立式できたかがポイントであった。
3 立体図形
近年出題されていなかった回転体の問題であった。あまり扱われない分野であるため,焦った受験生もいたと思うが,(1)は回転させてできる立体図形を落ち着いて描けば難しくない。それとは対照的に(2)は難しい問題であり,作図も難しく,中学生でこの回転体を想像できる人は非常に少ないと思われる。
この大問は(1)を落ち着いて解き,(2)を飛ばすことが最善策に思われる。加えて,問題であまり見慣れない問題が出たときは落ち着いてまずは図を描くことが重要である。
4 立体図形
2024年度3題となる立体図形。一見難しそうだが,解き方は立体図形の定石に基づいており,しっかり身についている人は得点できただろう。また,立体図形の問題は計算量が多いため,計算ミスにも注意する必要がある。
(1)は与えられた値を使うために立方体の対角線を含む切断面を考えれば求められる。また,正四面体の一辺の長さが求められれば,高さが求められるため,正四面体の一辺の長さを文字でおいて高さをそれで表そうとしてもできる。
(2)は(1)と独立した問題。切断面を適切に取れれば,三角形に接する半円が描けると思う。この先は平面図形の一般的な問題である。
5 確率
設定自体は難しくないが,手順が多くて数え間違いが多くでる問題であった。確率の問題は全ての場合を書き下して求めるのが一番正確であるが,各手順で得られる点数を整理しながら解ければ時間短縮につながった。
(1)は手順2・手順4で「すべて異なる数字が出る」場合と「Aから1を出し,他2つが3になって1点加算される」場合が出ればよい。
(2)(3)も同じように数字が限られているのでどのように出ればいいかは絞りがつく。また「確認した数が,3つとも同じ場合」は出る数が3の場合しかなく,加算される点も4点しかありえないことを抑えておけばやりやすかっただろう。
6 整数問題
毎年出題されている記号を導入する問題。今回は2が何回かけられているかについての問題であり,2024年度入試で最も考えやすい問題であり,(2)まではしっかり解き切りたい。
(1)は記号の理解を聞く問題であり,8の倍数,かつ16の倍数でないものの数を数えればよい。
(3)は記号が掛け算についてのものであるため,因数分解をすることが最初のポイント。との中に合計9個の2がかけられるようにの値を探していく。時間をかければ解き切れる問題であった。
対策
堀川探究科の問題は突飛な問題が出題されることは少なく,頻出問題をいかにしっかり対策したかがかなり大きなカギとなる。類題を見たときに解く方針がすぐに思いつくようなレベルになっておく必要があるだろう。そのためには過去問はもちろん,普段使っている問題集の発展問題であっても何回も解いておくことを薦める。直前期になれば時間配分も考えて解き,素早く解けるようになるまで演習しよう。
理科
総論
小問数が前年度から若干減少の全25問(近年の平均くらい)。大問数は近年の傾向通り2つだったが、例年大問1の方がボリュームがあったのに対して、今年度は大問1に比べ大問2の方にボリュームがあった。また、全問を通して知識問題が2問と非常に少なく、計算問題や思考問題の割合が高いという特徴も例年通りであった。全体の難易度としては例年比で()だが、全国の公立高校の中ではやはりトップクラスの難易度である。
堀川高校の理科の大問数は2問だが、それぞれの大問が2or3つの文章題に分かれており、受験生からすると大問5個分の問題量に感じられるだろう。さらに文章量が非常に多く、かつ難解であり、40分という短い時間制限も相まって受験生はかなりスピードを意識しながら解かなければならないことに注意してほしい。
大問別分析
大問1
今年も初見のテーマについて、いくつかの実験とその結果から解答していく問題が出題された。大問1のテーマは「四酸化三鉄の組成」「化学の計算」であった。Ⅰは標準〜やや難であったのに対して、Ⅱは標準〜やや易という難易度であった。
今回の問題では、原子の質量比を考えることに慣れているかが鍵になった。受験生になじみのない酸化鉄についていかに原子レベルでイメージできるかで大きく得点率が変わっただろう。(4)が一つの物質の中に価数の異なる鉄イオンが含まれていることの誘導になっており、うまくこの誘導に乗れれば計算問題はそんなにハードではなかったはずである。また、大問を通して知識問題がなく、思考力、計算力が試される大問となった。
大問2
大問1に引き続き初見のテーマについて、会話文の中の実験とその結果から解答していく問題が出題された。大問2のテーマは「摩擦の向き」「空気の浮力」「加速度の変化」であった。Ⅰ、Ⅲは標準〜やや難程度であったのに対して、Ⅱは難という難易度であった。
(2)や(6)の基礎的な問題を落とさないようにするのが合格する上では欠かせない。Ⅱは空気の密度の差によって生じる浮力の問題であり、受験生はなかなか目にすることのないテーマであるうえにイメージもしにくく、特に(4)を受験生が試験会場で正解することは至難の業であった。このような難問を見抜き飛ばすことも非常に重要である。物理分野の問題では日頃いかに本質を考えながら問題を解いているかが問われ、表面的な理解で挑めばかなり手痛い結果となってしまうだろう。
今年の1問
問題
大問1(改)
(4)Fe3O4の固体中のFe2+とFe3+とO2ーの個数の比を答えなさい。
※意味はそのままに文章を少し変えています。
解答・解説
正解…1:2:4
Fe2+:Fe3+:O2ー=x:y:zであるとすると、(鉄原子の総数):(酸素原子の総数)=3:4より、(x+y):z=3:4。また(+イオンの価数の合計)=(ーイオンの価数の合計)であるから2x+3y=2z。これらより、x:y:z=1:2:4。
基本に忠実に手順を踏むと正解できる問題であるが、試験本番で正確に解答するのはやや難しいくらいの難易度だろう。また講評にも書いた通り、この問題が四酸化三鉄の正体についてヒントを与えるような問題となっており、のちのⅡをスムーズに解答するには是非解きたい問題である。一つの物質の中に異なる価数の陽イオンが存在するという新しい設定を柔軟に受け入れられるかを問うている問題ともいえ、堀川高校の一筋縄ではいかない様子を象徴するような1問である。
まとめ
堀川高校探求科の理科は分量も多くかつ難易度も相当高い。よってこの高校を受ける受験生には今一度自分の勉強の仕方を振り返って見てほしい。自分の解答と答えの近さだけを追い求めるのではなく、解答の深さを追及するような勉強を意識的に行っていく必要がある。また、焦って長文形式の問題の対策に取り掛かるのは逆効果である。文章を読む速度が上がったとしても、基礎知識がなければいつまでたっても正答率は上がらない。時間がある夏の間に教科書を読み直して、抜けている知識がないかよく確認してほしい。そこで深めた理解を基にすれば秋以降の演習でいくらでも応用問題は解けるようになる。
社会
例年の傾向
特徴① 分野融合型の問題が多い
堀川高校探究科の社会は地理・歴史・公民のすべての知識を使って解く問題が多く出題されます。特に大問1はその傾向が強く,各分野の知識を結びつけて問題に取り組む必要があります。
特徴② 図表に関する問題が多い
堀川高校探究科の社会では,図表に関する問題が多く出題されます。教科書に載っていない初めて見るような図表も出されることがあり,問題文などからヒントを掴む必要があります。
特徴③ 記述問題が必ず出題される
堀川高校探究科の社会では,80字程度の記述問題が毎年2題出題されます。教科書に書かれた内容が問われることはまず無く,与えられた資料を元に考えた内容を答える問題であることが多いです。
堀川探究科社会 2024年度入試分析
※難易度の説明
A:合格点を取るためには正解しなければならない問題
B:合格点を取るためには半分以上は正解しなければならない問題
C:解けなくても合否に影響しない(=解けなくても十分合格できる)問題
大問1
問題番号 |
分野 |
概要 |
難易度 |
|
⑴ |
歴史 |
奈良時代の中国の王朝名を答える問題 |
A |
|
⑵ |
地理 |
地図と航空写真をもとに,長崎市周辺の地形の特徴を考察する問題 |
B |
|
⑶ |
① |
歴史 |
江戸時代初期の外交政策に関する問題 |
B |
② |
歴史 |
鎖国下における国交の特徴に関する問題 |
A |
|
⑷ |
歴史 |
江戸時代のキリスト教信仰に関する問題 |
A |
|
⑸ |
① |
地理 |
地形図の読み取りに関する問題 |
B |
② |
地理 |
写真と雨温図が示す都市を選択する問題 |
B |
|
⑹ |
地理 |
写真と統計資料をもとに南アメリカの土地利用の特徴を説明する問題 |
B |
⑴は短答問題,⑷⑹は記述問題,それ以外は選択問題でした。
地理分野の問題は地図・写真・統計といった資料をもとに答えを考える問題が多く出題されました。
大問2
問題番号 |
分野 |
概要 |
難易度 |
|
⑴ |
公民 |
契約に関する問題 |
A |
|
⑵ |
公民 |
年代別投票率の表の読み取り問題 |
A |
|
⑶ |
公民 |
財政や金融に関する問題 |
A |
|
⑷ |
① |
公民 |
選挙に関する問題 |
A |
② |
公民 |
比例代表制度と一票の格差の関係性を説明する問題 |
B |
|
⑸ |
公民 |
選挙に関する問題 |
A |
|
⑹ |
① |
歴史 |
明治時代の日本の外交に関する問題 |
B |
② |
歴史 |
明治時代から大正時代にかけての経済に関する問題 |
A |
|
⑺ |
歴史 |
帝国主義に関する問題 |
A |
⑺は短答問題,⑷②は記述問題,それ以外は選択問題でした。
教科書に載っている知識を正確に把握していれば,難なく解ける問題がほとんどでした。
対策と勉強法
対策① 教科書の内容を確実に覚える
堀川高校探究科の社会の問題は,教科書に書かれている内容からしか出題されません。つまり,教科書の内容を確実に覚えることで,合格点を取ることができます。
教科書の内容を確実なものにするためには,定期テストに向けて普段からしっかり勉強することが必要です。中学3年生になったら中2までの内容の復習を行いつつ,歴史・公民分野の先取りを行うことが重要です。
中学3年間の内容が1冊にまとまっている問題集を進めながら,教科書範囲の内容を確実な物にしましょう。
対策② 普段から資料集・地図帳を見る
堀川高校探究科の社会の問題は,図表に関する問題が多く出題されます。初めて見るような図表であっても,日頃から図表に見慣れておくことで,資料の内容を読み取ることができるようになります。
図表に慣れておくためにも,普段の学習から図表を見る習慣をつけ,写真や統計,史料などの内容を把握しておくようにしましょう。
対策③ 過去問を解く
堀川高校探究科の社会の問題は過去問の傾向に沿って出題されます。入試当日に全く同じ問題が出題されることはほとんどないですが,出題傾向に慣れておくことで問題に対する対応力を高めることができます。
堀川高校探究科の社会の傾向をつかむためにも,過去問3年分は解いておきましょう。その際,正解した問題も間違えた問題も,どのように答えが導かれるか説明できるようになるまで復習をしておきましょう。